第26話 原野商法でこまぎれにされた土地をまとめて買い取って活用したいな
さて、過疎化に悩んでいるであろう都道府県に設置する予定の再生工場都市の具体的な設定地域と職業高校の設置について話した俺はさらに話を続ける。
「あと北海道の苫小牧とかは原野商法でだまされて土地を買ってしまったものの、結局は使い道がなくて放置されてる土地が結構あると思う。
なので、原野商法の被害にあった人には相応の価格で土地を買い取りますよというテレビや新聞での告知を行って実際に買い取ってほしい。
そこが一時的な休耕地、休閑地だったりしてもかまわないよ。
まあそこで値段を釣り上げてこようとする連中は無視していいけどさ」
俺がそういうと北条さんは首を傾げた。
「原野商法ですか?」
俺は原野商法について説明する。
「原野商法は1960年代から1980年代に流行した悪徳商法の一つで特に列島改造計画の70年代が最盛期だね。
最終的に見れば値上がりの見込みがほとんどないような山林や灌木や雑草が生い茂った原野について、実際には建設計画等はないにもかかわらず「ゴルフ場やスキーリゾート用の別荘地としての開発計画がある」「もうすぐ幹線道路ができる」「新幹線の開通計画がある」などとうその説明をしたり、「将来確実に値上がりする」などと問題勧誘を行ったりして販売をする商法で被害が多発している悪徳商法なんだ。
まあ、土地を買って転売すれば儲かるというのは首都圏のニュータウン地域や別荘地なんかでは本当にあったわけだけど」
俺がそのように説明すると北条さんは納得したようにうなずいた後で聞いてきた。
「なるほど、そういうものですか。
しかし、持っていても価値がないから値上がりの見込みがないのでしょうが、そういった土地を買い取ってどうするのですか?」
俺は説明を続ける。
「確かに多くはまともに道路も通っていない上に特に北海道なんかだと年間のかなりの期間が雪に閉ざされる人跡未踏の原野だったりする。
だから別荘やベッドタウンとしての居住地としてはまあ期待できるわけがないよね。
だけど、都道府県に許可を得て地下水を水源地として利用してミネラルウォーターの製造工場を作るとかには使えると思うんだ。
まあ工場を作るにしてもまずは道路の設置から始めないといけない可能性もあるんだけど。
でも、霞ケ浦が水源の茨城南部や手賀沼や印旛沼が水源の千葉北部・埼玉の南東部や東京・神奈川の東部、あとは琵琶湖が水源の滋賀に京都・大阪や愛知、福岡なんかの水源の水質が悪い人口密集地の水道水はくそまずいからミネラルウォーターは実際売れてるし、ある程度安くできるなら東南アジアなんかの在留邦人向けに輸出するとかもできると思う。
日本みたいに水道水を普通に飲んでも平気な国は実は少ないからね」
俺がそういうと北条さんはうなずいた。
「なるほど、そのような用途でしたらありですわね」
さらに俺は話を続ける。
「あと、人間が食べる農作物の栽培を行う農地には向いていなくても、家畜の飼料用のデントコーンやライムギ・エンバク・大豆・ジャガイモなんかの輪作農地にはできると思う。
そういった作物は人間が食べるためのスイートコーンや小麦なんかよりも寒いとか雪が多いとかで環境が厳しくても育つものが多いからね。
だから、それらを栽培してして酪農農家へ安く供給できるようにしてもいいと思う。
大規模に栽培すれば農作機械を使っても元は取れるはずだし、輸入飼料より安くできればいうことないしね」
俺がそういうと北条さんはうなずいた。
「なるほど土地として安く購入できる、なおかつ乳牛にしても肉牛にしても畜産が盛んな北海道であればそういった用途に使うのも確かにありですわね」
「うん、千葉も畜産が盛んだし生産緑地指定されてるけど実際には農業がおこなわれていない休耕地も買い取って畜産用飼料の生産を北海道と同じようにできればいいかなと思う。
けど生産緑地指定された土地といっても結構高いだろうから無理にやらないでもいいかも?」
「無理に買い取ろうとする必要はないですが、多少安くても売りたいという方々からは買ってもいいのではないでしょうか」
北条さんがそういうので俺はうなずく。
「そうだね。
まあ、農地としてはどうやっても使い物にならなそうな土地だとしても、自然にあふれたキャンプ場にするとかができればいいし、最悪自然保護に役に立つかもしれないしさ。
まあ、そもそも法務局なんかも、ちゃんとどのように土地が利用されるのかとか調べるべきだとは思うんだけどね。
一筆である土地の区割りを自由に分筆登記できる制度を悪用されてるしこの辺りは改正していくべきだと思う。
さすがにあんまりひどい案件は公正取引委員会とかが動いてるみたいだけど、個人的に詐欺や横領なんかについてはもう少し重い刑罰にした方がいいと思うよ」
俺がそういうと上杉さんも北条さんもうなずいた。
「ああ、元教員として言うがまじめに働くより詐欺などをして金を得たほうがいいと思う人間が増えるのは良いことではないだろうしな」
「上杉さんの言う通りですわね。
労働より犯罪のほうが楽に稼げるという認識が広がっては誰も働かなくなりますわ」
俺はうなずいた後で言う。
「まあ、そのとおりなのだけど、もともと湘南とか軽井沢、伊豆高原とかも何にもない場所が別荘地になっていくにつれて開発が進んでいったり、政府がグリーンピアを建設していったのを、北海道とか栃木の那須高原とかが同じように別荘地にして金を落としてもらいたい、みたいな思惑で土地を売ったもののうまくいかなくてどうしたものかってなってるところも多かったんだろうけどな。
整備新幹線での東北新幹線や北海道新幹線の着工の延期も予想外だったかもしれないし。
とはいえ別荘地なんてのが際限なく増えても、利便性の悪い場所が売れないのも当然ではあるんだけど」
別荘地として実際に開発されて成功した土地の存在っていうのは厄介なんだよな。
実際バブルがはじけた後は別荘地は軒並み悲惨な感じになっていたはずだ。
まあ、現状では”前”ほどには狂乱的なバブルは発生していないので、別荘を買って後悔する人間は減っていると信じたいところだけどもな。
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