第25話 再生工場都市では子供を産んでも不安にならないようにしたいものだ

 さて、俺は北条さんや上杉さんを呼んで、俺たちができる範囲で国産牛肉の消費を確保できるようにしたいことをお願いした。


 具体的に上杉さんには牛肉のランク付けを行ってほしいこと。


 生産された肉畜は、農場から直接食肉センターに出してもらって、屠畜解体したものを直接買い付けるようにしてほしいこと。


 ランクに応じてオーベルジュやホテル・旅館などで高級牛肉料理として出すものと工場の社員食堂などで安く食べられるものに分けてほしいことを話した後、総合リサイクル工場都市を過疎に悩む地域の全国各地に展開したい旨を話した。


「まあ、ひとつの工業都市を作り上げるのに何百億円か千億円くらいはかかるだろうから、国や地方自治体にも手伝ってほしいとは思うけどな」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「そうですわね。

 せめて地方自治体は公営住宅の設置ぐらいはしてほしいものだと思いますわね」


 俺はうなずく。


「とはいえ自治体に投げると、いくつも下請けを抱えた土建屋に発注してかえって高くつくなんて可能性もあるから悩ましいけどな。

 まあ、それよりも先に役所には道路や消防署・警察署の派出所や交番に公民館や図書館の設立や上下水道なんかの整備もしてもらわないといけない。

 それに、そもそも財源がさほどに豊かじゃない場所が多いだろうからあんまり期待はしてないけど」


 そして上杉さんが聞いてくる。


「そもそもどこの都道府県に作るかは分かったが、もっと具体的な地域も考えてあるのか?」


 俺はうなずく。


「そうですね。

 金属の塊の粗大ごみや廃車は基本的に鉄道や貨物船で運びたいので、鉄道のハブになっている駅と貨物船が停泊できる港があって、工場施設をちゃんと建てられそうなある程度は広い工業用地としての平地がある場所になるので目星はつけてます。

 北海道は苫小牧。

 青森は青森。

 福島は貨物船での輸送を優先するなら小名浜、鉄道での輸送を優先するなら郡山。

 福島は家庭からのものだけでなく事業者のものも含めて首都圏の多くの粗大ごみを引き受けるつもりだから、両方に作ってもいいかも。

 その場合小名浜は茨城・千葉・東京都の東部で、郡山は栃木・埼玉・東京都西部が粗大ごみとかの収集対象になるかな?

 新潟は新潟。

 静岡は焼津。

 福井は敦賀。

 和歌山は和歌山。

 島根は米子。

 高知は高知。

 鹿児島は鹿児島。

 とまあそんな感じです。

 11か所作るなら予算はおよそ1兆1千億円くらいは見ておかないと駄目かなとは思うけど」


 俺がそういうと二人はうなずいた。


「ふむ、まあいいんじゃないか?」


 上杉さんがそういうと北条さんも言う。


「工業用地がある場所でないと工場は作れませんからね。

 予算がそこまでかかるというのは悩みどころですが」


 そして俺は言葉を続ける。


「それから工場なんかの給与体系だけど基本は20万円で、昇級昇格による昇給はあるけど基本給のベースアップはなし。

 その代わり結婚して子供ができたら、具体的には妊娠が確認されて中絶や児童養護施設へ入れたりせず、ちゃんと養育することが確認できたら、家族手当で給料にプラス30万円。

 まあ、奥さんと子供が一人増えても中学卒業までは地方自治体から児童手当も出るし何とかなるだろうと思う。

 さらに子供が一人増えるごとに育児手当でプラス10万円ずつ。

 とはいえ上限は最大で4人目までかな。

 職場で必要な資格があってそれを持っていれば資格手当や皆勤手当、住宅手当、通勤手当なんかも出す。

 結婚したくても金がないから結婚できない、子供がほしくても金がないから子供を作れないじゃ国が亡ぶからね」


 俺がそういうと上杉さんが聞いてきた。


「結婚して子供ができるだけで、給料に相当な差が出るがいいのか?」


 俺は大きくうなずく。 


「ええ、子供ができれば将来の労働力の確保に加えて、食料に関しての消費も確保できる。

 逆に子供が生まれなければ、私立学校や塾などに加えてゲームなどのの子供向けと思われている産業から衰退する可能性が高いですし、時代に逆行するようですが、俺は女性は働くことよりも、家庭で家事や子育てや躾をちゃんとすることを優先してほしいし、結婚や出産は早めにしてほしいんですよ」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「なるほど、それも道理ですわね。

 実際に過疎化が進む地域では廃校になる学校も増えつつあると聞きますし、塾などの需要もなくなるでしょう。

 何よりゲームが売れなくなっては困ります」


「それから教育に関してだけど、小中学校は市立の公立学校を普通に利用してもらうつもり。

 幼稚園や保育園、高校と大学は私立のものを用意して高校から大学は基本的に希望者はエスカレーター式で進学できるようにするけどね。

 そして高校は職業高等学校にして基本的に就業のための専門的な知識や技術が得られる科目を複数設置したい。

 具体的には旋盤やボール盤なんかの工作機関や電動工具の使い方やそれらを使って怪我をしないための安全教育なんかを教える機械科。

 ここでは溶接や天井クレーン、フォークリフトに危険物取扱などの工場で働くのに必要な資格取得もできるようにしたい。

 制御盤や建築物内の配線設計や施工を行える電気工事士。

資格や高所作業車の操作に関する資格を取れる電気科。

 建築士や建築積算士、建築積算士補、建築施工管理技士、管工事施工管理技士、宅地建物取引士などの資格が取れる建築科。

 簿記や珠算・電卓実務の資格が取れる商業科。

 プログラミングを教わって情報処理検定・ワープロ実務検定の資格などを取れる情報処理科。

 畜産について学べ、家畜人工授精師などの公的資格を取れる畜産科。

 畜産を除いた農業について学べ、農薬散布のための一般毒物劇物取扱責任者やトラクターなどの特殊車両免許の資格などを取れる農業科。

 水産業について学べ海技士、小型船舶操縦士、海上特殊無線技士、潜水士、冷凍機械責任者、ボイラー技士などの必要な資格を取得できる水産科。

 土木や造園、園芸について学べ土木施工管理技士や造園施工管理技士、造園技能士などの必要な資格を取得できる土木造園科。

 病院などでの看護を学べ准看護師資格を取得できる看護科。

 家事や乳幼児に対する対応を学び専業主婦やベビーシッターはハウスキーパーや保育士になれる主に女性向けの家庭科。

 家庭科は高校3年生の学校に通わない期間にすでに働いている男性とお見合いをして、すぐ結婚できるようにしていいかもと思ってる。

 あと貨物輸送やトラック運転にかかわる免許や資格を取得できる物流科。

 これまでの科は基本的に資格を取って卒業すればほぼ就職できるけど、ここからはそうもいかないかもしれない。

 和洋中の料理やパン・ケーキ類の調理をできる調理師免許資格を取得できる調理科。

 俳優・声優・役者・シンガーソングライター・ミュージシャン・テレビキャスターなどを受け入れたりそれを目指す人間にトレーニングを行う芸能科。

 プロ野球やプロサッカー、プロテニスやプロゴルフ、あるいは将棋や囲碁などのプロとして生きていくための知識教育やトレーニングを行うプロスポーツ科。

 エスカレーター式で大学でも学ぶ医学部や獣医学部、教育学部なんかもあった方がいいだろうね。

 あとは難易度高めの大学進学を目指す特進学科ってところかな。

 高校の普通科に行って普通に大学に行っても工場で働く時に必要なことをいちいち現場で全部教えるより、学校である程度教わっておいて、あとは工場の環境によって専門的な教育を行えばいいだけにしておきたいんだよね。

 もちろん専門的なことを学びたい人間が増えそうなら高専や短大・大学でさらに学べるようにしていいと思うけど」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「それはとてもいいと思います」


 まあ、実際には漫画を読んだりやゲームをしたりする人間の年齢が上がっていくことで、子供が減っていってもそこまでゲームなんかの売り上げは下がらないんだが、いずれにせよこのまま少子高齢社会が進むのもまずいしな。


 そして俺はため息をついてからいう。


「そもそも政治とは何かといえば、自分の権力の及ぶ範囲の人間の意見を聞いてそれぞれの利害調整をし、可能な限り多くの者の不満をなくし、多くの人間が快適に生活できるようにするというものだと思う。

 けど現在の政治は銀行などの金融機関や不動産や鉄道など土地を持ってる、いわゆる金持ちの人間ばかり有利になっていて、このままでは一次産業も二次産業も壊滅してしまう。

 でも自国での食料生産能力や工業生産能力を確保するのは防衛のためにも非常に大切なはずだからね」


 北条さんもため息をついて言う。


「だからと言って一企業グループがシャカリキになって対策をするのもどうかと思いますが」


 俺は苦笑して答える。


「でも結局は自分たちのためだよ。

 最終的には俺たちの利益になるはずだしね」


 北条さんは少し考えた後言った。


「まあ、それはそうですが。

 金額は莫大ですがこれは投機ではなく投資だと思いますしね」


 そこへ俺は言う。


「そもそも、現状だと利益を上げてもほとんどを税金でがっぽり持っていかれるんだから、金は使わないと」


 北条先輩は大きくため息をついてから言った。


「それもそうなのですわよね」


 ちなみに一次産業とは、農業・酪農畜産・水産業・林業などで林業を除けば食料確保に直接かかわってくる。


 二次産業は、金属や岩石などを採掘する鉱業・採石業・砂利採取業、土木工事や建築工事を行う土木建築業や建設業、様々な品物を製造する製造業で工業生産能力に大きく当てはまる。


 三次産業は現状では一次産業と二次産業を除いたすべての産業とされていたが、四次産業は情報産業,医療産業,教育サービス産業などの知識集約産業を示すようになっていった。


 さらに今までの産業を組み合わせた五次産業やら六次産業やらも考え出されていったが、サービス業ばかり増やしていっても日本は良くはならないだろう。


 まあ、自分たちは物価が上がれば給料も上がる、物価スライド式給与体系で暮らしている政治家や公務員にはそもそも物価や税金が上がるのがどれだけきついか、子供が生まれないとこの先どうなるのかなんかは全くわからないんだろうけどな。

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