第19話 いつの時代でもエロは強いんだよな
さて、家具屋のヒトリの買収を北条さんに依頼したところで俺は聞いた。
「そういえば前に買い取って子会社化した、エロゲメーカーの”ふぇありぃている”って去年ソフトをどれくらい出して、どれくらい売れた感じだったかな?」
俺がそう聞くと北条さんは答えてくれた。
「ふぇありぃているが昨年に発売したゲームソフトの本数は11本で、最低限2万本ほど売れていますね。
特に”緋色のドレス”という作品はかなり評判が良いようで、5万本ほど売れたようです
販売価格が1万円程ですから、1タイトル当たり2億から5億ほどの売り上げにはなるので、馬鹿にはできません。
無論、ホムコンやサンシャインなどのソフトに比べれば販売本数自体は一桁少ないですが」
”緋色のドレス”は推理物のコマンド選択式
一般ゲーム並の高いストーリー性と、美しいグラフィックを併せ持った最初のエロゲといわれてる作品で、単純にエロCGを見せるのではなく、ストーリーを楽しませるつつ、ちゃんとエロ要素も持たせることを意図した最初のゲームといわれていて、後に独立する”森妖精”のゲームの基礎になったゲームともいわれている・
アダルトゲーム専門ブランドの作品において、エロCGを見るだけのゲームから脱却した、美少女ゲームの方向性を示したゲームでもあるはずだ。
まあ、そういう方向が進み過ぎて別にこのゲームにエロはいらなくないか? といわれるゲームが出てきたりもするのだが。
とはいえ前はそこまでは売れていなかったはずなので、だいぶ売り上げが上方修正されている気がするな。
おれは北条さんの回答にうなずいた。
「まあ、パソコンゲームで5万本売れればかなり良い方だと思し、確かに馬鹿にはできないよな。
11本も作品を作ってるのを見ればわかるように、アドベンチャーゲーム系は製作期間や制作に必要な人員はそんなに必要ないから製作費も安く済むしね。
でも一昨年まではエロゲってそこまで売れてなかったような?」
俺が首をかしげると北条さんは答えた。
「理由は二つありますわね・
まず一つ目は昨年の教育施設での教育用パソコン導入によって、波及的に会社や個人でパソコンを購入した人が増えたこと」
俺はその回答に納得がいってうなずいた。
「ああ、会社でもパソコンを使うようになるってことで、個人でパソコンを買った奴も増えたんだな。
それこそ一昨年まではパソコンが趣味みたいな人間しか持ってなかったんだけど」
まあ、それが、アメリカやヨーロッパに比べてホムコンのようなゲーム専用コンピューターが日本では爆発的に売れる理由でもあったんだが。
俺がそう答えると北条さんもうなずいた。
「ええ、そういうことです。
それともう一つはパソコン雑誌へ、見開きでの広告を大きくのせるようにしたことです」
俺はその回答にも納得がいってうなずいた。
「ああ、パソコン雑誌での大々的な宣伝もあったから、売り上げ本数がだいぶ伸びたのか。
まあ、宣伝広告を打って知名度を上げるのは大事だよな。
その辺りはサンシャインやポケットサンシャインでも同じだけど。
週刊少年ホップの袋とじのおかげで、サンシャインのソフトは相当知名度が上がってるもんな」
俺がそういうと北条さんはうなずいた。
「ええ、その通りです」
「とすると、ふぇありぃているにはコミケでエロ同人を書いている同人作家に声をかけて、登場キャタクターの原画を書いてもらったり、シナリオライティングをしてもらったりするのがいいかもな。
プログラミングまで、ちゃんとできる奴はいないと思うけど、そこはもともといるスタッフがカバーできるだろうし」
俺がそういうと北条さんはうなずいて答えた。
「なるほど、ではそういたしましょうか」
まあ、エロは基本的に若い男だけがターゲットとはいえ、ある程度の本数は確実に売れるというのも強いんだよな。
それを考えると……俺は北条さんにもう一つ提案してみることにした。
「北条さん、今倒産しかかっていて、うまく再生すれば儲かるだろう会社はあるんだけど……」
「妙に歯切れが悪いですわね。
一体どのような会社ですか」
斎藤さんや浅井さんがいるから、ちょっとばかり大きな声ではいいづらいのだが、まあエロゲの話を言っておいて今更ではあるか。
「まずは日本活動冩眞株式會社っていう、映画製作、配給会社。
ここは撮影所や直営の映画館もたくさん持ってる。
かつては日本の五大映画会社だった時代もあり、一時は映画館のほかホテル・ゴルフ場・ボウリング場をもつ総合レジャー企業を志向していた時期もあったらしいけど、逆にそれが災いして、今はピンク映画制作専門会社みたいになってるんだ」
北条さんは首をかしげている。
「ピンク映画ですか?」
そして斎藤さんが言う。
「あなたは本当よくわからないことまでよく知ってるわよね」
俺は苦笑しつつ答える。
「それこそ10年位前まではそういう映画くらいしか、エロい映像や音声が楽しめる媒体がなかったからね。
80年代に入ってビデオデッキが急速に普及したのは、アダルトビデオの存在もかなり大きいらしいし」
俺の言葉を聞いて北条さんは首をかしげている。
「では今更そのような映画制作会社を買収しても元が取れないのでは?」
「まあ、普通に買収しただけだとそうだよね。
なんで水晶映像っていう、アダルトビデオメーカーも一緒に買収してほしいんだ。
ここは村東とおるっていうAV監督と現役大学生だっただった白木香っていうAV女優が、テレビ、雑誌などのメディアに引っ張りだこになり、「ナイスですね~」といった監督の独特な話法も話題になったことで、一般レベルで広く知られるようになったんだ。
けども、監督が無許可のモデル事務所から17歳のモデルの派遣を受け、AVに出演させたとして職業安定法・児童福祉法違反容疑で逮捕された後、制作活動を自粛したことで、今現在は決定的なヒット作にも欠け、業績が低迷してるところらしいんだよね。
監督も独立を考えてるみたいだし。
俺たちはセル&レンタルビデオ店も持ってるから、アダルトビデオを作れれば儲かるとは思うよ」
俺がそういうと北条さんはうなずいた・
「なるほど、両方を買い取れば確かにもうけにつながりそうですわね」
北条さんの言葉に俺はうなずく。
「あと直営映画館は路地裏のあまり目立たない場所とかにあるものが多そうだから、個室ビデオに改装して、アダルトビデオが見やすいようにするといいんじゃないかな。
自社作品はLDで個室ビデオで見られるようにおいてもいいと思うけど」
俺がそういうと北条さんは首を傾げた。
「個室ビデオとはいったいどのようなものですか?」
ん、ああこの時期だと個室ビデオはまだメジャーな存在ではなかったか。
「個室ビデオっていうのは、その通り個室でビデオを見ることができる施設だよ。
料金は時間制で、個室の大きさは一部屋一畳ぐらい。
個室にはティッシュやゴミ箱、寝転べるフラットマットの部屋か、リクライニングチェアなんかがある。
受付で主にアダルトビデオなんかの映像作品ソフト、少数の人気映画やテレビドラマ作品、雑誌や漫画などを選んで、指定された個室にはいって、それらの映像ソフトを視聴したりすることができるって感じ。
もちろん音は周りに聞こえないようにヘッドホンを使うけどね。
で、まあ個室において自慰行為をすることが想定されており、個室が外から見えないようになっている場所。
なんで性風俗店舗という扱いになっているし、新宿だと東口の歌舞伎町とか南口の雑居ビルにあるはずだけどけどまだそこまで数は多くないかな。
ビデオデッキにしろLDデッキにせよ、大きめのモニタのテレビにせよ結構高いからね」
「そんな施設が儲かるのですか?
今はレンタルでもアダルトビデオはいくらでも借りられるでしょう」
「とはいえ、そもそもまだまだビデオデッキは高いし、同居家族が居るとかそもそも個人では部屋やテレビを持ってないために、自宅ではアダルトビデオを見たりしにくい男は少なくないからね」
実際ビデオボックスはずっと先まで廃れなかったしな。
「あと簡易的な休憩所として使えるように毛布のレンタル、シャワールームの設置と有料でのバスタオルの貸出や使い捨ての歯ブラシや髭剃り、せっけんなどのアニメティの提供、飲料やスナック菓子やカップラーメンなんかの食事の提供、中古の映像作品の販売などもできるようにするといいね」
「ふむ、なるほど、そういった施設はもう新宿にあると?」
「あるけど新宿の場合はのぞき部屋や個室マッサージ、個室ヌードや違法な個室ヘルスやピンクサロンのほうが多いかな。
あと個室も半畳くらいに固い椅子とモニターがあるだけって感じみたいだよ」
「なるほど、居心地のいい場所ではないと」
北条さんがそういうので俺はうなずく。
「まあ、そうだね」
「わかりました、では、そちらも進めていきましょう」
「うん、よろしくね」
俺と北条さんとのやり取りに斎藤さんはあきれ顔で浅井さんは苦笑していた。
「本当にあなたたちはお金儲けのためには手段をあらばないのね」
斎藤さんがそういうと浅井さんも言う。
「とはいえ、芸能界とかを見ても男の人の欲望とかはすごいですからね……」
浅井さんの言葉の入れはうなずく。
「うん、男の性欲は何らかの方法で発散したほうが痴漢や強姦なんかの性犯罪は減ると思うんだ」
あと、このころはAVアイドル女優といわれて、AVに出演したからと後ろ指をさされるような存在ではなく、むしろタレントとして活躍するようになったりもしている。
女性側も下手に違法風俗で働いたり、ブルセラショップで下着を売ったり、援助交際をしたりするよりはだいぶましだとも思うんだよな。
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