第18話 国内の林業保護後のためにも北海道の家具メーカーを買収しようか

 さて、あの後、俺は北条さんにワークデスク&チェアや自分の部屋用のワークステーションやホビーパソコンの手配を頼んだ。


「あまり私の仕事を個人的な用件で増やさないでほしいものですが」


 溜息をつきながらそういう北条さん。


「ごめんごめん、でもこういう時にこういうことを頼めるのは北条さんだけだしさ」


 俺がそういうと北条さんは言った。


「本当に仕方ない人ですわね」


 で、まあ大体の準備は終わって、会社寮への引っ越しの日だ。


「じゃあ、行ってくるね。

 お母さん」


 俺はお母さんに見送られていた。


「一人で暮らすようになったからって、好きなものばかり食べないで、ちゃんとバランスを考えて食べるのよ。

 後、たまにはこっちにも帰ってきなさいな」


 俺はお母さんの言葉にうなずいて答えた。


「うん、そんなに遠くに引っ越すわけじゃないしね。

 たまには帰ってくるよ」


 家を出たら家の前で待っていたらしい、新宿まで向かうために上杉さんが運転するストレッチリムジンに乗り込む。


 車体のベースは日三の最高級車チェアマンのようなんだが、後部座席の部分は魔改造されていて、後部だけ見ればミニバンを改装した車のようだ。


 そこが広々とした客室キャビンになっていて、中には北条さん、斎藤さん、浅井さんが座っていた。


 アームレストには後席専用エアコン&ラジオの操作スイッチが内蔵され、その後方には10連装CDチェンジャーの操作スイッチと自動車電話がある。


 そういえば固定電話回線を引いたらプッシュホンを買わないとな。


 今なら留守電や無線子機なども付いたタイプも出てるだろう。


 ナンバーディスプレイとかワンタッチダイヤルが付くのはもう少し先だとは思うけど。


 テレビモニターやビデオデッキに冷蔵庫と電気ポットにウッドの折りたたみ式テーブルなども用意されている。


 シートにしわってみるとシートヒーターが装備されているのかシートは暖かく、フットレスト付きのシートは座り心地も抜群。


 無論、車内はエアコンで十分暖かい。


「や、みんなおはよう。

 ところで北条さん、これって社用車?」


 俺がそう聞くと北条さんはうなずいた・


「ええ、日三自動車で作らせた特注品です。

 今後はあなたが私と一緒に直接どこかに行って、誰かに合うときなどはこちらを使ってください。

 防弾ガラスなどを用いた安全性と居住性を合わせた車になっていますので」


 北条さんの言葉に俺は苦笑しつついう。


「まあ、いわんとすることはわからんでもないんだけど、ちと防弾ガラスは大げさすぎない?」


 俺の言葉に対して北条さんは真剣な表情で言った。


「そうとも言えませんわよ。

 念には念を入れること残したことはありません」


「まあ、あちこちの企業を買収しては経営陣を追い出したりしてるし、恨みを買ってる可能性は高いからな俺たち。

 中にはヤクザや過激派とつながっていた連中もいるだろうし」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「そういうことです」


「まあ、それはいいとしてどれくらいの値段なのこの車」


 俺がそう聞くと北条さんは涼しい顔で答えた。


「3000万円程ですわね」


 思っていたよりだいぶ高い。


 この時代300万円でも高級車扱いなんだがな。


「これ一台で新車の大型バス一台とか新築一軒家がかえちゃうなぁ。

 まあ、良血のサラブレッドを買おうと思ったら、一桁上の一億くらいかかるとは思うけど」


 俺と北条さんお会話を聞いていた浅井さんが驚いたようだ。


「ええ?

 競走馬って1億円もするんですか?」


 俺はそれにうなずく。


「親が三冠馬とかだとそうなるのも珍しくないらしいね。

 まあ高い値段が付いた馬が必ずしもいい成績を残せるわけでもないけど。

 競走馬のオーナーになるのは飼育にも月75万円くらいの金がかかるし、お金儲けのためというより、税金対策で赤字の事業を持ったり、馬主であるという箔をつけるためという意味合いが大きいね。

 まあ有名なレースで自分の所持している馬が一着になれれば億単位の賞金が入ってくるし、いい成績を残して種付け馬になれれば一回1000万円とかになったりもするけど」


 俺がそういうと北条さんは疑わしそうな人間を見る目で言った。


「でも、そんな馬はほんのわずかなのでしょう?」


 俺は苦笑しながらうなずく・


「まあ、一年間に生まれるサラブレッドのオスは3000頭くらいで、その中で種付け馬になれるのは30頭くらいらしいけどな」


 俺がそういうと北条さんはフウとため息をついて言った。


「税金対策として必要経費を増やすのも私たちにグループの名を売って箔をつけるためにも競走馬を買うのは構いませんが、もう少し確実の儲かりそうなものにお金を使ったほうがいいのではないでしょうか」


 俺はそれを聞いて少し考えた後言った。


「そういえば北条さんは家具はどこでどういうものを買ったの?」


「私はせっかくなので銀座のギャラリーでイタリアのロココ調家具を購入しましたわ」


「ああ、世界的にみるとイタリアの家具はブランド力が高いんだよね。

 衣服とか車もそうだけど、イタリア人はデザインセンスがいいんだろうね。

 でも価格も相当したでしょ?

 特にソファーとか」


「まあ、本革を使ったソファーは100万円ほどしましたわね」


 俺はそれを聞いてから斎藤さんにも聞いた。


「斎藤さんは言っていた通り、船橋のイケヤで買ったのかな?」


 俺がそういうと斎藤さんはうなずいた後に言った。


「ええ、シンプルだけどそれなりにいいものを買えたと思うわ。

 流石にソファーは20万円程はしたけど」


 それを聞いて俺は言う。


「イケヤは比較的安いけど、家具って基本的に高いんだよな。

 そこで、比較的安い家具を作って売ってる北海道の火鳥家具を今のうちに買収しておいたらいいんじゃないかな?」


 ここは後々”お値段以上、ヒトリ”というCMで有名になるが現状では北海道ローカルな家具屋でしかない。


 まあ、値段が安い代わりに耐久性が低いとか見えないところの作りが雑、販売員対応が悪すぎるなどという評判も出てくるのだが、店舗数が増えすぎたり、東南アジアの原材料を東南アジアの工場で作らせたりするようになってからは特に品質がいまいちになったらしい。


 しかし、俺が家具を買ったツルモクは品質はいいが、価格もかなり高い。


 なので、ヒトリが海外にシフトする前に、企画・製造・流通・小売りをすべて自社で行うことでコストを下げるという方式は取り入れつつ、海外へのアウトソーヂングはやめさせて、品質は保持しつつ、日本の木材を使い、日本の工場で生産する、安めでデザインや品質はそこそこいい家具を供給できる家具屋にしておきたいんだよな。


 これは国内の林業保護のためにもやった方がいいと思うし。


 北条さんはうなずいて言った。


「わかりました。

 そちらは進めておくことにしますわ」


「うん、よろしくね」


 まあ、ヒトリには安いが品質はいまいちな海外生産ブランドと、ちょっと高くなるが品質のいい国内生産ブランドを両方持たせるというのもありかな。

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