第13話 会社の寮の役員が住む場所はかなり変わった作りだな、まあ住みやすそうではあるけど
さて、新宿の会社の寮に入るメンバーもわかった。
そして北条さんが言う。
「では、寮に入る方々はさっそく引っ越しの準備をしてくださいな。
とはいえ心機一転、家具家電は新しいものを買いそろえてしまったほうが良いかとも思いますが」
俺は苦笑してうなずいた。
「俺の子供部屋から何を持っていくか考えたけど、とりあえずは着替えや礼装くらいであとは新しく買ったほうがよさげな気がするな。
もちろん実際に部屋を見て、部屋の大きさとかを確かめてからになると思うけど」
俺の言葉に北条さんは言う。
「お金の心配はありませんので、そのようにしたほうが良いかと思いますよ。
今の家にあるものはご両親が買い与えてくださったものでしょうから、残しておいた方がさみしくもないでしょうし」
「たしかにな」
というわけで、皆で建物の中を見に行くことになった。
新宿駅西口から徒歩で10分くらい、新宿中央公園の南端の手前位と結構近めだ。
建物の高さは15階建てくらいか?
周囲には5階建てくらいが多いようなので、上の方の階であればよその建物の同じ高さの階の住人にみられるということもないようだ。
もちろん屋上もほかの建物から見られることはないんだろう。
まあ、もとはジャーニーズのトップアイドルグループを住まわせるためにわざわざ比較的最近に建てたらしいが。
「こんなに立派なマンションのお部屋に住めるなんて夢みたいですね」
浅井さんが笑顔で言う。
「こちらは地上15階、地下2階建てで地下はスタジオルームのような共用設備、駐車場や貯水タンクのスペースなどですね。
寮の最上階フロアに入るのは前田さん、私、斎藤さん、浅井さんの4名で、最上階の15階ペントハウスおよびメゾネットの14階の共用施設と屋上をすべて含めた場所が一括借り上げです。
その他のメンバーは13階以下の空いている1LDKの部屋を借りることにします」
俺はうなずく。
「まあ、最上階にあるペントハウスが空いている理由は、部屋の構造が奇妙すぎるからなんだろうな、2LDKが9部屋別々にあるのに、それと屋上や14階の設備は共用できるとかさ」
北条さんもうなずいて言った。
「ええ、そういうことですわね。
2LDKにはそれぞれ玄関やキッチンやバス・トイレ・洗面などがありますが、普通の家族で住むならそこまでは必要ないでしょうし。
しかし、芸能人であれば知らない他人と共用スペースを共有するにもためらうことがあるでしょうし」
そんなことを言いながら俺たちはマンションに入っていく。
「入り口前に当然防犯カメラは設置されていますが、エントランスやエレベーターの中にもあります。
入り口の自動ドアは強化ガラスでできていますし、オートロックは暗証番号式です。
またキーが無いとエレベーターで住居階のボタンが押せません。
24時間体制での有人管理体制のコンシェルジュカウンターがありますので、宅配便やクリーニングは、マンションから外に出なくてもできます。
そしてコンシェルジュが郵便物をすべて受け取ってそれぞれの部屋に送ってくれます。
それとは別に防災センターには24時間警備員が常駐していますね。
タクシーやハイヤーの手配や花の宅配の仲介なども頼めますね。
13階以下の居住者の共用施設の利用申し込みもこちらです。
キッズルーム施設や13階の眺望ラウンジが人気だそうです。
地下駐車場には自分専用の頑丈なシャッター付き個別ガレージがあります」
北条さんの説明に俺はうなずく。
「ふむふむ。
なるほど、確かに管理人じゃなく、コンシェルジュって感じだね。
さすがセキュリティと住民サービスに関してはかなり徹底されてるみたいだ」
「まあ、芸能プロダクションが一括してマンションを買い上げて住まわすことは珍しくないようですが、その場合やはりセキュリティには気を配りますからね」
そんな説明を受けている間にエレベーターは15階に到着した。
廊下にはふかふかの絨毯が敷き詰められている。
それを見た斎藤さんが首をかしげながら言った。
「なんだかマンションというよりホテルみたいな雰囲気ね」
それに対して北条さんが答えた。
「ええ、おそらく意図的にそうしたのだと思います。
ではこれがカギになります」
と北条さんがそれぞれに鍵を渡した後、そのカギにあう部屋を指示していく。
一番奥が俺、その手前が北条さん、その手前が浅井さんで、さらにその手前が斎藤さん。
「では、あとは各自で部屋の確認をしてください」
北条さんがそういうと、みんな部屋に入っていく。
俺達の部屋は2LDKで和室6畳が一部屋、洋室6畳が一部屋、LDKが12畳に洗濯用洗剤やトイレットぺーパーなどを置ける棚やトイレ・脱衣所・洗面共用で、ここにトイレ用仕切りのカーテンはある。
バスはその奥で分離、据え付けの食器棚付き、二口ガスコンロを置ける大きさのキッチンにシンクと結構広い。
それとは別に小さめの物入がいくつかと食料置き場がキッチンスペースの奥にある。
「和室の押し入れに加えて洋室のウォークインクローゼットも結構広いな。
こりゃタンスはいらないか。
それに寝室は和室だから寝具はベッドより布団のほうがいいかもな。
その代わり冬は炬燵を置いておこう」
実際に見てみないと、いろいろわからないことも結構あるな。
リビングダイニングにはテレビとビデオデッキにテレビ台、ソファー、ダイニングテーブルと椅子。
キッチンには冷蔵庫と炊飯器、電子レンジにオーブンと食器やカトラリーに調理道具など。
洗面所には洗濯機と乾燥機。
あと各部屋の天井照明やスタンドライトとエアコンの必要か。
洋室にはデスクとチェアとパソコンや本棚ってところか。
まあ、それらを一通り買って、足りないものは買い足していけばいいだろう。
そんなことをしてから部屋の外に出ると、ほかのみんなは部屋の下見はもう終わっていた。
「ごめん、俺が一番遅かったか」
俺がそういうと浅井さんは笑顔で答えてくれた。
「だ、大丈夫ですよ。
私たちもさっき終わったところですから」
そして下のエントランスに降りていくと、芦名さんと佐竹さん、横山さんに上杉さんも下見は終わっていたようだ。
「思っていたよりもだいぶ広かったな」
上杉さんがそういうと芦名さんと佐竹さんも言う。
「僕たちは二人で一部屋で十分だよ」
「っていうか、俺たちにはそれでも十分広すぎるけどな」
それを聞いて俺はうなずく。
「児童養護施設だと6畳で二人暮らしとかも普通だったりするみたいだしな」
「そうそう、二段ベッドがあればそれで充分寝られるし」
芦名さんがそういうと佐竹さんも言った。
「勉強は座卓に座布団だったしな」
なるほどと俺はうなずく。
「まあ、今度の部屋は二段ベッドじゃなくても大丈夫だと思うよ」
結局は衣服以外の物はほとんど新しく買いそろえることになりそうだが、それはそれで楽しいかもしれないな。
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