第12話 ライジングの初期メンバーなどの進路が分かったな

 さて、数日後のライジング本社にはゲーム部創設メンバーなどが集まっていた。


 そこでまず俺は北条さんへと日三の宇宙航空事業部は独立させたほうがいいことや、自動車関連でタクシーのニーズを守っていくべきであること、日三にはノウハウがない軽自動車を作らせるため、富士山重工業の自動車部門を日三と統合すること、いすず自動車を買収したほうがいいこと、この先に需要を見越してミニバンの開発を進めさせた方がいいことなどを書いた紙を渡した。


「とりあえず、最近考えていたことをまとめておいたからあとで見てもらえるかな?」


 北条さんはうなずいた。


「ええ、わかりましたわ」


 そして今部屋の中にいる具体的なメンバーは俺、斉藤さん、上杉先生、北条さん、最上さん、朝倉さん、明智さん、浅井さん、芦名さん、佐竹さん、足利さんに横山さんだ。


 そして北条さんが言った。


「東京の本社ビルを新宿西口に用意できました。

 それに伴い同じく新宿西口にオートロックマンションを押さえております。

 ただ、こちら西千葉の事務所も今後は継続して、千葉支店として利用します。

 そして、今後の進路を改めて皆で確認いたしましょう」


 まずは俺が言う。


「まず俺と斎藤さんに北条さんは東大に行くとともに、新宿の本社勤務にもなるな」


 俺の言葉に北条さんがうなずいた。


「ええ、そうなります」


 そして斎藤さんが言う


「とは言ってもしばらくの間、ゲーム制作の主力は今年の2年生組だから、私たちは直接的にはあまりやることはないように思うけど」


 それに対して北条さんは言う。


「どちらかといえば、今後は人事採用担当になると思います。

 いずれにせよ製作スタッフの増員は急務です」


北条さんの言葉に斎藤さんはうなずいた。


「なるほど、そういうことね」


二人の言葉に俺もうなずく。


「もう自分でゲームを作ってる規模の会社じゃなくなってるってことだしな」


 そして芦名さんと佐竹さんはというと。


「僕たちも本社で働くことにしたよ」


「まあ、俺たちは大学に行くより働いたほうがいいしな」


 二人の言葉に北条さんがうなずいた。


「二人には今後とも私の仕事を手伝ってもらいますからね。

 今後は新入社員募集をかけますが、やはり私と仕事を一緒にやっていた方にアシストしてもらったほうが良いですし」


 俺はそれにうなずく。


「どっちにしろ、うちの会社の場合は最初はバイトとしての採用で、どんな仕事に適正があるかと、仕事に対するやる気がちゃんとあるかを半年くらいは見てから、正式採用ってことにするわけだけど、うまく使える人間が来てくれるとも限らないし、すぐに来なくなる奴もいるとも思うしな。

 少し余裕を見て採用はするべきだとも思うけど、あんまり人数が多すぎてもまずいだろうし」


 実際、今までは学校の部活ということで半分以上は趣味でやっている部分が多かったが、会社の仕事としてやろうとするときついと感じる人間も多いだろう。


 プログラマーの離職率20%程度とも聞くが、50%を超えている企業もそう珍しくはないとも聞く。


 35歳までに80%以上の人間が辞めていき残るのはわずかとも聞くな。


 まあ、その辺りは会社のほうに問題があることもあるし、働き手に問題があることもある。


 特に新卒などの今までに働いた経験がない場合は自己分析が甘く、自分がうまく活躍できる環境が入社前には見えていない場合なども多い。


 逆に会社側が、薄給で社員に高い能力というか成果を求めすぎている場合も多いけどな。


 朝倉さんと明智さん、最上さんはというと。


「私はここの学校の新設の大学になる千葉経済大学に行くです」


「自分も同じっすね」


「私も同じくです」


「ああ、そういえばそれに伴い、高校も千葉経済大学附属高等学校になるんだよな」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「ええ、今後は大学の付属高校という位置づけなので、希望者は自動的に大学あるいは短大に進学できることになります。

 無論、東大や早稲田慶應といった大学を受験するのは自由ですが。

 もともと、千葉経済短期大学は昭和43年(1968年)に開校していたのですけどね」


 そして浅井さんと横山さんは。


「私たちは高校卒業したら、声優業に専念することになりますね」


「まだまだアニメのオーディションは厳しいし、ゲームの方でもちゃんと使ってよね」


 俺は苦笑しつつうなずく。


「二人はすでに芸能系にデビュー済みってことだし、そのほうが自然かな?」


 俳優や声優は高学歴である必要性は薄いからな。


 足利さんは聞くまでもないな。


「私は今年高校三年生ですから、もちろん今と同じ学校ですね」


 そして俺は上杉先生に聞いた。


「上杉先生は4月からは、また新一年生の担任ですか?」


 しかし、帰ってきた答えは予想していないものであった。


「いや、教師は3月でやめているよ。

 4月からはお前たちの専属運転手だな。

 特にやることがないときは遊園地や旅館、オーベルジュなどのメニューの味を確認しに行ったり、うまい酒を探しに行ったりするが」


 その答えを聞いて俺はかなり驚いた。


「え、そうなの北条さん?」


 そう聞いた俺に北条さんはこくっとうなずいた。


「ええ、今後は移動に便利なように、固定翼自家用操縦士および回転翼自家用操縦士の免許も取得していただく予定です。

 上杉さんであれば運転を任せるにせよ、自力で移動していただいて、各設備の料理が来客の満足を得られるか確認してもらうにも実績がありますからね」


俺はやや苦笑しながらうなずいた。


「まあ、確かに今までの実績からしても、上杉さんならいろいろ安心して任せられるか」


 そして北条さんが言う。


「となると本社の寮に住むのは前田さん、私、斎藤さん、芦名さんと佐竹さん、浅井さんと横山さんに上杉さんの8名ですね」


 それを聞いた浅井さんが言う。


「私たちも住んでいいのですか?」


 それに対する北条さんの回答はというと。


「ええ、アニメなどの収録スタジオは都内が多いようですし、ゲームでも同様でしょうから、こちらのほうが便利でしょう?」


「あ、はい、それは助かります」


「なお寮とするマンションは入り口がオートロックになっています。

 なので基本的に部外者は入り込めません。

 また、最上階の居住者は専用のカギがなければ入ってそもそも最上階までいけません。

 運転手は専用駐車場の脇から専用エレベーターで最上階へ移動するため、階下の人が勝手に最上階あるいはその下の玄関前まで入ってくることもありません。

 また入り口は24時間有人管理に加え、メゾネット形式で屋上にあるバーベキューなどが可能な屋上庭園やプールも利用でき、最上階の一階下の共用部にはサウナ付大浴場、ハウススタジオ、フィットネスルーム、シアタールームなどもあるようです。

その他エントランスにはゲストルーム、入り口には防犯カメラなども設置されていますね。

 最上階などにはいつでもゴミが捨てられるダストステーションもありますから、ゴミ捨てのたびにエレベーターに乗り降りしてダストステーションにごみを捨てに行く必要はありません」


 俺は感心しつついう。


「よくそんな物件を抑えられたね」


「もともとは某男性アイドルの芸能プロダクションが、最上階にお気に入りのトップアイドルグループを住まわせるために所持していたもののようですね」


「ああ、そういう由来があったわけか。

 じゃあ、防犯や盗撮なんかには細心の注意を払ってるだろうし、部屋もいいものなんだろうね。

 なんか俺が思い描いていた社員寮とはずいぶん違うけどな……」


「まあ、最上階付近はともかく、下の方はそこまで豪華な部屋では無いようです」


「人気アイドルとして売れてればいい部屋に入れるが、売れてなければそこそこの部屋ってことかな」


「ええ、おそらくそうなのでしょうね。

 プライベートでスキャンダルを起こさせないためなのかもしれませんが」


「俺が考えてた寮に比べて豪華すぎるんだけど?」


「いいではありませんか、設備の豪華さはおまけで本質はセキュリティの高さです。

 安全はお金で買うものなのですから」


「まあ、確かにそう考えておいた方がいいかもな」


 そこで俺は話題を変える。


「大学に入る前に北条さんには俺の婚約者になってほしいと思うんだけどどうかな?」


 さすがの北条さんも少し面食らったようだ。


「それは私と結婚したいということですか?」


「うん、今後もセレブ層なんかと会うときには北条さんのサポートは絶対必要だしね。

 あと、婚約者がいるとなれば金やコネ目当てで近づいてくる女性とかをけん制できると思うし。

 北条さんには俺に近づいてくる奴の素性とかを調べてほしいんだ」


 これはハニートラップ対策でもある。


外国の工作員や俺が株主になってる旧経営陣など、俺を蹴落としたい、弱みを握りたいってやつも多いだろうし、単純に金目当てで近づいてくる女性もいるかもしれない。


 北条さんはため息をついた後言った。


「つまるところ、私は富裕層と会うときのサポートに加え、個人的虫よけと護衛を兼ねたような役割を求められているわけですね」


「ああ、うん、そういうことになるね」


「その言い方はあまり人としての心がないように感じますが?」


「う、うーん、そういうつもりでもないんだけどね。

 つまるところ北条さんはとても魅力的な女性だからこそ、こういうことを普通に言えるわけだし」


俺がそういうと北条さんは少し拗ねたように口を尖らせた。


「むぐ、そういう言い方は卑怯に思いますが」


「ちなみに正妻に加えて妾として妻同様に迎えるからには、子供は全員認知するし遺産も均等に分けるよ。

 明治から戦後の政治家に三木文吉って人がいて、この人は正妻以外に妾が5人いたらしい。

 正妻さんは早稲田大学のクラスメイトだったけど、妾さんは料亭の女将や赤坂の芸者出身の布川ツル、元日活女優に看護婦なんかだったけど、戦時中に疎開するときも全員疎開先に連れて行ったし、離婚したり、支援を打ち切ったりすることもなく最後までちゃんと面倒は見ていたんだよね。

 俺もそうできればいいと思ってるよ」


俺がそういうと北条さんが聞いてきた。


「で、私以外に妻に迎えたいというのは誰なのですか?」


「うん、まずは斎藤さんと浅井さん。

 斎藤さんは中学の時から仲良くしてくれているし、ゲーム制作や小説や漫画などの出版ではとても重要な要素のストーリーを作れるライターをちゃんと入れてくれるとも思う」


斎藤さんはふうとため息をついて言った。


「まあ、そういうことなら……正妻はあっちというのは少し悔しいけど」


「それと浅井さんは今までつらい思いをしてきたからその分幸せになってほしいと思ってる。

 それに女性アイドルや女性声優は一生続けるのは大変だと思うしね。

 何より料理や掃除なんかの家事がとても得意というのがいいと思うんだ」


俺がそういうと浅井さんは笑顔で言った。


「え、えへへ。

 うれしいです」


そして北条さんが言う。


「では寮の最上階フロアに入るのは前田さん、私、斎藤さん、浅井さんの4名ですわね。

 部屋自体は6部屋あるので人数を増やすことはできますが」


俺は苦笑しつついう。


「まあ、三人を娶ってうまくやれるかを試してからだね」


 金の問題だけなら多分クリアできると思うが、家庭を持つというのはそんな単純なものではないとも思うしな。

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