第10話 引っ越しで持っていく鋳物はほとんどなさそうだ、そして日三の宇宙航空事業部は独立させようか
さて、俺は引っ越しの準備のために自宅に戻ってきていた。
「ただいまー」
俺がそういうとお母さんの声が返ってきた。
「あら、お帰りなさい」
なので俺はお母さんへ言う。
「お母さん、東大の駒場キャンパスに通うにはここからだと遠過ぎるから、会社の東京寮に引っ越すことにしたよ」
「あら、そうなの、ちょっと寂しくなるけど、大学に行くならそうなるのも仕方ないわね」
「うん、ただ向こうに持っていくものは、ほとんどないかもなんだけどね。
家具とか置いていってもいいかな?」
「そうなの?
それは別に構わないわよ」
「うん、まあ今から部屋を見直してみるけどね」
「わかったわ」
というわけで俺の部屋、いわゆる子供部屋に戻る。
俺の部屋にあるのは勉強机に椅子、ベッド、本棚とタンスに14インチのブラウン管テレビとパソコンセットといったところだ。
この中で引っ越し先に持っていくとしても着替えのための衣服くらいかな?
勉強机と椅子は小学校に入るときに買ってもらったものなので、もう12年使ってるわけだがなかなか丈夫で壊れている個所は特にないので使おうと思えばいまでも使える。
ただ、さすがにもう古いし、大学生が使うにはちょっとな。
パソコンはもうメモリの性能的にお話にならないのでやはり新しく買おう。
当時は最高性能でモニターを合わせて100万円近くしたものだし、ゲームで遊んだり、プログラムを実際に組む練習をしたりで非常に役立ったが、今ではメモリ性能が低すぎて使い物にならない感じで、この時代のパソコンはメモリの増設とかもできないしな。
そして、パソコンはたったの4年で性能に格段の差がててしまったが、それは今後もしばらくは変わらないんだよな。
遠い未来ではスマートフォンも同じように4年もしたら、性能的にも使うのは厳しいうえにバッテリーが消耗してしまい、充電しても電池が全く持たなくなってしまって、結局は買い替えるしかなかったけど。
いわゆるガラケーはそこまで性能には問題はなかったけど、折り畳み式とかだと折れたり物理的に壊れることが多かったな。
ベッドは中学生の時に買ってもらったものだけど、正直分解したり組み立てなおすのが面倒くさいし、もう少し大きいサイズのベッドにしたい。
大学生にもなれば誰かと一緒にベッドで夜を過ごすこともあるだろうし。
テレビも寮にはリビングがあるならもう少し大きいテレビにしたいしな。
まあ、ブラウン管テレビだとあんまり大きいサイズの奴は重過ぎるんで24インチとかそのくらいかなと思っているけど。
まあ、タンスの中身も大学生が通学とか外出とかに着るにはきついか?
Tシャツやパンツ、あと礼装の類以外は何枚か余所行きの服を持って行って、あとは買ったほうがいいかもなぁ。
しかしまあ、こう考えると一度買えば長く持つものと買ってもすぐに性能的に見劣りする物の差が激しいな。
自動車とかバイクは速度とか馬力については、もはや上げる意味がないので今は安全性や快適さを上げる方向でいっているわけだけど。
そういえば日三自動車は昨年度は黒字になっているようだが、正直まだまだ利益率は低すぎる。
日三は泥沼の人事抗争を70年代から続けてきているのだが、そうなった理由の一つは宇宙航空事業部の存在にもあるように思う。
もともとは戦前からロケット技術を研究していたゼロ戦などで有名な中島飛行機が紆余曲折あって日三自動車に取り込まれる形となったが、この時代ロケットや人工衛星の打ち上げなどは基本的に日本政府の管轄で行っている。
なにせロケットの打ち上げには開発から製造、打ち上げまでで、数百億円かかるので民間企業が全部自力で出せる金額ではない。
将来的には2桁ほど下げることが可能になって、民間でもロケットや人工衛星の打ち上げをやるようにはなるけどな。
なので、基本的に現在は宇宙開発事業団への協力という形で資金を出してもらっているのであろう。
つまり、宇宙航空事業部は国鉄やNALなどと同様な半官半民の企業でと考えているのであれば、事業に失敗をしても政府が日三へ資金を投入してくれると考えていてもおかしくはない。
まあ、日三の場合は日本政府が手助けするわけでもなかったんだがな。
日三自動車の宇宙航空事業部は 昭和28年(1953年)にロケット飛翔体の研究に着手し、その後、ロケット飛翔体の開発、及び製造の総合メーカーとして、科学観測や実用衛星分野での固体ロケット開発などで多くの実績と成果を上げてはいる。
なお、軍用の連装ロケット砲やロケットランチャーなどのライセンス生産とかもしていたりするな。
そしてロケットの技術は弾道ミサイルへの転用も可能だからなぁ、結構やばい部署だったりするな。
というわけでここは完全に切り離して、自動車関連以外の事業は日三自動車から切り離して独立させ、そちらには政府の資金援助があっても自動車関連にはその恩恵が行かないことを明示したほうが良いように思う。
日本人の悪い癖として、半官半民のような企業に就職した場合、安定を望むあまり失敗した場合に日本政府にその尻拭いをさせようとする傾向にあると思うんだよ。
つい最近までは天下りも盛んだったわけだしな。
安定を求めたくなる気持ちはわかるが、利益を出さなくても赤字でも国が何とかしてくれるから真面目に働かなくてもいいという考えの人間が上にも下にも大勢いるようでは話にならない。
ちゃんと利益を出そうとする経営者やちゃんとユーザーの満足するサービスや製品を作る社員でなければ、良い会社にはできないのではないかと俺は思う。
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