第7話 その他いろいろな買収案件もちゃんと進んでいるようだ。
「そういえば大手航空会社のNAL、もしくは東亜国内航空の買収のほうはどうかな?」
俺が北条さんにそう聞くとコホンと気払いをした後で北条さんが答えた。
「現状双方に対して買収の打診をかけておりますが、東亜国内航空のほうが取得は楽そうだとおもいますわ。
その設立の経緯から運輸省からは冷遇され、一部の幹線を除き採算の取りにくい国内ローカル線のみが割り当てられることとなっており、厳しい経営を強いられているようですし」
北条さんの答えに俺はうなずく。
「なるほど、それだと買収はうまくできそうな気はするね」
「もっとも1951年の設立から長らく半官半民という経営体系であったNALは社内派閥の対立が激しく、運輸省と一体となってきた東大閥の官僚派、早稲田や慶應といった私大閥の営業派、さらに組合対策の労務グループに労働組合派閥があって内部での泥沼人事抗争の歴史に加え、高コスト体質であることや、事故の多発もありこちらも経営状態は良くないようですので、買収すること自体は不可能ではないと思いますが、ブラックマンデーによる世界的な不況による需要の減少もあって国際線は厳しい経営を迫られていますからね」
そして北条さんはとある資料を見せてくれた。
NALは従業員数が2万ちょっとに対して役員が18名
ANAは従業員数が1万ちょっとに対して役員が30名
東亜国内は従業員数が3千ちょっとに対して役員が30名
なるほど、どっちもだいぶ問題があるんだな。
「官庁に干されてきた東亜国内航空と逆に国に優遇されたことでコストとかユーザの反応とかを考えていないNALか。
NALの問題は日三なんかと同じみたいだけど。
正反対でも結果は経営危機につながるっていうのはなかなか笑えないよな。
結局財界がバックアップしていた全日本航空輸送が一番バランスがいい経営だってのがなんともだな
東亜国内航空は従業員数に対して役員が多すぎだしNALはそもそも従業員数が多すぎる」
俺がそういうと北条先輩は聞いてきた。
「で、どうしますの?
東亜国内航空にせよNALにせよ買収そのものは可能ですが」
俺は少し考えた後で答えた。
「まずは規模の小さい東亜国内航空かな。
こちらの買収のほうが容易だと思うしね。
可能であればNALも買収して会社を統合して、路線を統廃合したりほうがいい気もするけど」
俺がそういうと北条さんはうなずいた。
「では、そういった方向で進めてみましょう。
経営状態が良くないこととブラックマンデーで株価が下がっていることもあって、予想したほど買収に必要な金額は高くはならなそうですし」
「うん、それでお願い」
そして俺は話題を変える。
「あと、沖縄国際海洋博覧会で使われたアクアポリスの買い取りのほうはどうかな?
谷津遊園の駐車場問題の解決のためには必要だろうし」
北条さんはフフッと笑って答えた。
「そちらは10億円で話が付きましたので、現在谷津遊園へ向けて曳航中ですわ。
防さび塗装などのメンテナンスを行いつつ、かき入れ時のゴールデンウィークの前には駐車場に転用できるように手配しております」
「さすがその辺りは抜かりがないね。
10億円でも当時の建造費130億円以上を投じた半潜水式構造物の買収価格としてはかなり安いとは思うけどさ」
「まあ、急いで入手できるように値が張るのをかまわず買い取りましたので10億になりましたが、来館者数が低迷し、本体の再塗装など保守費用の調達も困難となっていた状態のようでしたので。
まあ、多少値が上がってもお客さんを逃がすよりはずっと良いですからね。
大型フェリーのレンタル代金もばかになりませんからね」
「船は高価だから仕方ないけどな。
まあメガフロートが有用なことが確認出来たら、いろいろな目的に転用できそうだしいいことかな。
それとザ・ハビランド・カナダの買収はどうなってるかな?」
「現在パオーイングの経営業遺体はかなり悪くなっていますので、610億円程度で買収そのものはできそうなのですが。
ただ、外国企業の大型買収案件は初めてなので書類などの面で少々手間どっていますわ」
「ああ、やっぱり国内企業とかとは手続きなんかが結構違ったりするのか」
「そうですわね。
でも、良い買い物にはなりそうに思います」
「日本国内だと速度より短い滑走路でも離着陸が可能なSTOL性を追求した50席程度の機体のほうがあってると思うしね。
ターボプロップエンジンメーカーだけでなくジェットエンジンメーカーも欲しいから次はアメリカのリアージェットあたりかな。
ここは短距離・個人所有向けのジェット機の製造メーカーでそこまで規模は大きくはないけど有望だと思うんだよね」
「ええ、そうですわね
確かに可能ならジェット機の製造メーカーも傘下に収めたいとは思いますが……まあ、ザ・ハビランド・カナダの買収の経験を生かせばそちらもスムーズにいくでしょう」
俺たちの会話に斎藤さんが頭を押さえていった。
「あなたたち東大受験をしながらよくそんなことまでやれたわね」
それに対して俺は苦笑しつつ答えた。
「いや、俺はほとんど実務的なことはしてなかったけど?」
そして北条さんはこともなげに答えた。
「それはお金のためですから、受験もしつつ必要なことを行うのは当然ですわ」
うん、北条さんは本当にすげえとしか言いようがないな。
俺なんかよりよっぽどチートな気がするんだが。
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