第4話 新三郷の複合商業施設も集客は順調なようで一安心だ、日三も一応は黒字になったようだな

「そういえば北条さん、新三郷の武蔵野操車場跡地に作ってる、遊園地や商業施設の方はどうなってるんだっけ?」


 俺がそう聞くと北条さんはふうっとため息をついてから言った。


「ショッピング関係や映画館、総合アミューズメント施設は昨年10月末に完成し、11月半ばにはテナントも埋まってそのままオープンしていますわ。

 ですので年末商戦には間に合ってますし、武蔵野線沿線や高速道路の6号線や常磐道近辺、或いは外環自動車道などの周辺ベッドタウンから買い物客が殺到しましたので、予想以上に客数が多かったようですわね」


「まあ、あのあたりには競合するような大型商業施設はないからね。

 柏とか松戸にはデパートはあるけど」


「ええ、レディースファッションや雑貨、ジュエリーショップやコスメティックをメインにしたファッションショッピングモールにフードコートなどに加えて、家電量販店、大型書店、楽器店、家具店、ホームセンター、大型玩具店、CDショップ、スーパーマーケット、セル&レンタルビデオ・ゲームショップ大型スポーツ・アウトドア用品店に銀行の支店など、ここに来れば大体の物は買えるようになっていますからね。

 また、車での来場を考慮して立体駐車場にかなりの数の車を止められるようにしてあります」


「なるほど、それは凄いね。

 冷蔵庫や洗濯機なんかの大型家電やタンスや机なんかの大型家具、ピアノやエレクトーンなんかの大型の楽器なんかはトラックでないと運べないだろうしね」


「ええ、そして、ショッピングの施設や駐車場、映画館や総合アミューズメント施設を含めても広さは30ヘクタールほどでこれは船橋のららぽーとのおよそ2倍ですからね」


「武蔵野操車場の総合的な広さは85ヘクタールくらいだったはずだから残りの55ヘクタールほどが遊園地やプールなんかに使えるのか。

 50ヘクタールというと舞浜のあれとか富士急高原ランドみたいなかなり敷地が広いテーマパークや遊園地に匹敵するな」


「ええ、5月にはそらも完成し6月中には安全点検を終わらせて、7月にはオープンさせますわ」


「夏休みはとくにプール施設の書き入れ時だからね。

 遊園地も大型ジェットコースターとか大型観覧車みたいな目玉になるアトラクションの宣伝広告をもう流し始めてるのかな?」


「ええ、そのあたりは抜かりはありませんわ」


「なら、新三郷の遊園地なんかの施設の方も問題はなさそうだね」


 俺がそういうと北条さんはふっと笑って言った。


「しかし、現地を実際に見た時は団地とぽつぽつ立つ建売住宅しかない本当に何もない場所でこんなところに施設を出しても本当にお客さんが来るのか疑っていました。

 ですが、今までも一見すると突拍子もない提案に見えても、買い取った物件などは利益が出ていますし、あなたの提案を飲んで大正解でしたわ。

 因みに他にも同じように出来そうな場所に心当たりとかはないのですか?」


「さすがにここと同じように行きそうな場所はもう知らないかな。

 山手線や横須賀線、南武線なんかの東京都心部や川崎横浜なんかの操車場跡地はあっという間に商業施設や駅前マンションなんかになってるみたいだしね」


「もう少し早くその話を聞いていれば不動産で儲ける事も出来たかもし売れませんが……」


 北条さんのその言葉に俺は苦笑する。


「俺は普通の人が普通に判断して儲けることが出来そうなことにまで手を突っ込むつもりはないかな?」


「それとショッピングモールもほとんどは貸テナントですからテナント収入は入ってきますが、直営店であればもっと利益が上がると思いますけどそれはしませんの?」


「新三郷で、直営になりそうなのは普段着和装と楽器店にセル&レンタルビデオ・ゲームショップくらいかな?

 でもまあ、飲食や小売りにはあまり手を広げるつもりはないんだよね。

 利益率も低いし細かいノウハウを得るのにも時間がかかりそうだし、なにより今から参入するのはだいぶ遅いと思うし」


「なんだかもったいないですわね」


 そう言ったやりとりを聞いていた斉藤さんがため息をつきつつ言った。


「ゲーム制作だけでも十分お金は儲かるのに、なんであれこれ手を出そうとするのかしら?」


 俺はふっと笑って言う。


「ゲーム制作だけで確保出来る雇用はそれほど多くはないからね。

 俺は日本の未来を守るためにも日三を買収して海外への工場転移を防いだり、ラジコン操縦のヘリをAIで自動操縦させるドローン技術の中国や韓国への技術拡散なんかも防ぎたいんだよな。

 残念ながら、今の財界・政界・官界は自分たちに利益しか考えないで国民がどうなっても知らんみたいなやつばかり見たいだから、俺がやれることはやっておきたいんだ」


「それはまたずいぶん壮大な事を考えているのね」


「まあ、最終的には俺自身の幸福の追求が優先ではあるんだけどな。

 自分を犠牲にしてでもなんてことは考えてないし。

 でも浅井さんとかみたいな不幸な環境にある人は多く救いたいとも思うよ」


 そこへ北条さんが言う。


「いずれにせよ、お金と人脈は必要ですわよ?」


「そうだね、だからゲーム制作で今後もちゃんと利益は出していくさ。

 そう言えば昨年の日三自動車の売上自体は海外も含めれば2兆円なのに、2000億円ほどの大赤字だったはずだけど、今年は黒字になったのかな?」


「今年は800億円程の黒字ですわね。

 ヨーロッパ方面への販売拡大のための人件費などはばっさりカットしましたし、同業他社に比べて明らかに高すぎるディーラーに支払う販売奨励金も同業他社と同程度にしました。

 その代わりユーザーのニーズに合うコンセプトを常に考えながら、最新テクノロジーを基本設計に埋め込んで車をモデルチェンジして行く事で、ユーザーのニーズに合わない押し売りから脱却を図った事でそれなりに利益は残りましたわ。

 アメリカでのダットサン・トラックも販売は好調ですのでそのままとしておりますが」


「まあ、黒字になったのはいいことだね。

 売れない物を値引きとかで無理に売ろうとするんじゃなく。ユーザーが買いたくなる車を作るのは当たり前だと思うんだけど」


「日三に限った事ではありませんが、泥沼人事抗争の結果総コストの大幅カットなど、必要なことがわかっていてもしがらみなどがあり、やれなかい事も多いらしいけどな」


「傍から見ればバカみたいな話ではありますけどね」


「全くだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る