幻実
懐かしい音楽だけを聴き、懐かしい小説だけを読んで生きることが俺の夢だった。世の中には看過し難い作品が無数にあるが、まれに孤独を語る言葉を持つ作家というのが存在する。彼らの作品は初めてみた時からなぜか懐かしい気持ちになる。存在しない記憶がその作品に呼応する。とても優しい気持ちになる。俺はそうした作品だけを摂取して生きていたかった。そうしていればいつか自分もそんなふうに美しい言葉を持ち、美しい人間になれると思った。だが非情なことに、現実はそうなれなかった。
みじかい幻想 甘雨隣 @misodengaku893111
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