第11話
「……暇ね」
「まあ、確かに暇だな」
砲撃はAIに任せきりであり、俺たちが介入する余地はない。
イーゼルタの砲門も開いてはいるが、俺たちは射角から外れているため動く必要すらない。
さらに言えば、サーニャの戦況分析も一通り終わったらしく、ただモニターを眺めて時々コンソールをぽちぽちいじるくらいだ。
俺はレーダーを眺めつつ、戦闘艦同士の熱いドッグファイトを観察する。
戦闘艦というのは、一人乗りもしくは二人乗りの超小型宇宙船のことである。宇宙船であるがゆえに形にかなり自由度があり、ボール型のものやブレード型、ヒト型など様々だ。
帝国軍の船は互換性と整備性を意識して、単調なデザインのものがほとんどだが、冒険者の船には逆にロマンにあふれた形のものが多い。
今俺の画面では、ヒト型の二機の戦闘機が激しくブレードで切りあっている。なかなか見ごたえがある戦いだ。しかし残念ながらこれは戦争である。
互いの味方が横やりを入れ、二機の戦闘機同士の戦いはたちまち混沌とした乱戦へと変わる。
と、《エースルーズ》から通信が入る。
『防衛隊へと告ぐ。敵機の来襲を確認。なお、敵機の数は不明。即時迎撃を開始せよ』
「仕事らしいな」
俺は砲撃を止めて、スロットルに手をかける。
「準備はいいか?」
「ええ、いいわよ」
スロットルを引き、ノルネを発進させる。あえて少し弱めに調整した重力制御装置のおかげで、心地いい加速感が俺の体を支配する。
「前方に敵機発見。戦闘機ね」
「了解。食うぞ」
スロットルをさらに引き、あっという間に戦闘機の背後へとつく。そして、30パーセントチャージのプラズマ砲を撃ち…そして、盛大に外した。
「ちょっと?」
サーニャの可愛らしい罵倒に心地よさを感じ……ではなく、サーニャの罵倒を聞き流しつつ、俺は、機首を再び会頭させ、弾速の遅さを慎重に計算したうえで第二射を放つ。
イフテのサポートもあり、今度はしっかりと命中した。
プラズマは戦闘機のシールドにぶつかると爆発し、一撃でシールドが吹き飛ばし、そのまま戦闘機を四散させる。
「ハープーンミサイル、発射」
サーニャの号令とともに、側面のミサイル射撃装置から1ダースのミサイルが発射される。今回の弾薬代はすべて帝国持ちのため、打ち放題だ。
「そのまま打ち続けてくれ。あの大型艦を食いに行くぞ」
どうやって近づいてきたのか、《エースルーズ》の半分ほどの大きさの船が、恐ろしい強度のシールドを携えて乗り込んできている。
こちらの大型艦の手を煩わせるには及ばない。
「サーニャ、イフテ、飛翔物の迎撃を最優先にしてくれ。ECM全開!」
俺はスロットルをマックスに叩き込む。
ウィィィィ……と《ノルネ》のエンジンが唸りをあげ、猛烈な加速を開始する。
点にしか見えなかった大型艦の輪郭が徐々にはっきりと見えてくる。
「敵艦からのロックオン確認!妨害するけど、全部は防げないわよ!」
「問題ない!俺たちを狙う小型機はいるか?」
「ミサイルで撃ち落としつつ、付近の大型艦に牽制射撃を要請するわ」
「助かる」
急速に接近する俺たちに気が付いたのか、急激に《ノルネ》に向けた攻撃が激しくなる。《ノルネ》のスピードはとうに音速を突破し、追いつくものは何もない。
「弾道発射装置、起動!」
『完了しました。電磁加速を開始します』
俺はレーダーと計器を見て慎重にタイミングを見計らう。
3......2......1......0。
「発射!」
電磁加速された対艦弾道ミサイルが《ノルネ》の機首から発射される。
それは、まさに雷撃。シールドを突破した対艦弾道ミサイルが大型戦艦に音もなく突き刺さった。
「離脱する!」
俺たちは速度を保ったままそこから離脱する。
背後では、対艦弾道ミサイルによって艦体を真っ二つにされた大型艦が機能を停止して、帝国軍からの袋叩きにあっている。
「やったわね」
「ああ。ジャイアントキリングだ」
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宇宙を翔ける冒険者 狂咲 世界 @nedu1412
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