第4話

───体育祭 当日───

長い長ーい校長の話を耐えて、遥斗が高校生になって初めての行事である、体育祭が始まる。体育祭は遥斗がこの学校に入学するきっかけになった行事だ。


遥斗が志望校選びに迷っている頃、寛太に「遥斗、陽明高の体育祭行かない?」と誘われた。

遥斗は大して用事もなかったし、ちょうど良い機会だと思った。そこで遥斗は各学年ごちゃ混ぜになって行うムカデ競走や同学年だからこそ白熱するリレー、特典には関係ないが入学したばかりの新入生の勧誘も兼ねている部活対抗リレーなどを見た。遥斗はそれぞれの競技で各自の個性を生かて、取り組む陽明高生を見て「寛太、俺陽明高受ける」と言ったほどだ。

しかし、陽明高校は県内随一の進学校であるため当時、成績が普通よりちょっと高かっただけの遥斗は猛勉強しなければならなかった。そこで大好きな野球の春大会の地区大会3回戦敗退の悔しさを勉強に当てて、親にも友人にも心配されるほど勉強に打ち込んでいた。遥斗は初めて【努力は報われる】という言葉を実感し、座右の銘になった。

晴れて1月下旬の陽明高校入学試験を突破した。


そして遥斗の大好きな体育祭も始まり、遥斗の出番である高1のリレーが始まる。遥斗が出るのは2回戦だ。リレーは1位から順に30、20、10、0点が入る。1回戦は危なげなく引き分けで終わった。続く2回戦、遥斗のチームの3走目がバトンパスをミスってしまい、接戦だったので一気に4位まで落ちてしまった。しかもスバルのチームは1位になった。そこで迎えたアンカーの9走目、1位は変わらずスバルのチーム、そこから離れて遥斗は4位でバトンを受け取った。そこから遥斗は持ち前の足で3位の人を抜き、直ぐに2位も抜いた。そこでみんな1位になれると思った。遥斗も行けると思った。しかし、スバルも遥斗と同じか、ちょっと遅い位だったので差が余り縮まらず遥斗は2位で終わった。遥斗は余り悔しくなかった。でもスバルはとても悔しそうに遥斗の元へ来た。そして、「来年は正々堂々勝負だ」と誓い、遥斗の競技は終わった。


そして本当は悠太が出るはずではなかった「パン食い競走」の応援に向かう。

悠太がパン食い競走に出ることになった訳は少し前に遡る。


元々は高校2年生のバスケ部の原田先輩という身長が190近くある人が出るはずだった。しかし、原田先輩が棒引き中にラグビー部員とぶつかって足を挫いたらしい。いや、ラグビー部員は反則だろ…

そこで、原田先輩と仲が良く、身長も高い悠太にお願いしたらしい。悠太は頼まれたら断れない性格なので引き受けた。(身長が高いせいか怖がられてあまり頼まれないが)

だが問題は悠太が食べれるパンなのかということだ。アレルギーとかではなくただの好き嫌いなだけだが。

でもそこは心配ない、ジャムパンやあんぱんからフランスパンまで色んな種類のパンが用意されている。さすが陽明高校!

そしてパン食い競走が始まった。初めに50mほど走って、コーラやファンタなどの炭酸系を飲んで、吊られているパンを咥えた後、食べきってからゴールしなければならないという特殊ルールだ。フランスパンなんかに当たったら負け確だ。

そしてパン食い競走が始まる。悠太は2番手で50m走り終わり、あまり炭酸の強くないカクピスソーダを選んだ。悠太、賢いぞお前…

そしてパン咥えタイムに突入する。悠太の狙いはジャムパンだ。事前に役員の先輩にあんぱんは粒あんか聞いていた。こしあんは食べれないらしい。でも、あんぱんはこしあんだったらしいのでジャムパンを選んだのだろう。

さすがバスケ部、身長が高いのでわずか10秒程で咥えられたっぽい。そしてジャムパンは直ぐに食べきれるので見事1着だ。おめでとう!

一方でスタート直後にコケていた高3であろう先輩は残り物のパンを1回で咥えれたが、やはりフランスパンは無理だろう、残念ながらギブアップしていた。しかもフランスパンは68cmで本場フランスと同じくらいらしい。


ちょうどパンを食べてエネルギーを補給した悠太は続く騎馬戦を迎える。1年生大将のゴン太くんの騎馬になった悠太はラグビーで使われるヘッドキャップをつけている。

「そんなガチなの?」と思う遥斗だが、相手も柔道部でデカイので納得した。ゴン太は大将なので周りに守ってもらいながらだが、敵味方共に1機ずつ徐々に減っていく。そして赤組ゴン太1機、白組2機が、残ったところで挟まれる。ゴン太が上手いこと避けながら白組1機に減らすと、よくアニメでありそうなオーラが見えた。頭の中でBGMもなっている。

一瞬、グラウンド全体が静寂に包まれる。

そして、───見事ゴン太が相手の伸びてきた手を避けて、相手の帽子をはじき落とした。ナイス、ゴン太!

「悠太って主人公補正かかっているんじゃね?」と一緒に見ていた龍と話していると悠太は嬉しそうに歯を見せてこちらにピースをしてきたので、遥斗は親指を立ててかえす。


あっという間に時間がたち、体育祭最後の種目である部活対抗リレーに出るそれぞれの部活のユニフォームを着た生徒がグラウンドに集まる。遥斗達はどの部活が1位か賭けをしていた。「未成年の賭け事ダメだぞ!」と思ったが、喜んで参加する。悪い子だなぁ…

まあ、予想は1着が陸上部で、最下位が将棋部となった。

そしてスタートが切られる。結果は観客皆驚いただろう。予想とは裏腹に将棋部が意地をみせ、最下位から2番目だった。最下位は科学部。それだけではなく、1位がなんと帰宅部だったのだ。なにせ帰宅部は怖い顧問から逃げた元サッカー部や元野球部などのほぼ運動部連合的な感じになっているから仕方ない…のか?陸上部が、陸上同好会化しないのを祈りながらヒーローインタビューらしいセットに立つ人をみる。


「優勝インタビューです!今回は自称帰宅部部長の先輩に来ていただきました!おめでとうございます!」

「ありがとうございます〜」

「勝因はどこだったのでしょう?」

「部員の頑張りですね!我々帰宅部はいかに速く家へ帰れるかに命を捧げています。興味がある方は是非入部してください」


コントのようなインタビューにグラウンドが今日イチの笑いに包まれた。

そうして遥斗の高校初めての行事の体育祭が終わった。

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男子校でもラブコメしたい! じゃがばた @bonjin513

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