第14話
二週間後、そのニュースは突然やってきた。
――――――――――――――――――――
二〇十九年二月一日付で下記の通り人事異動を発令いたします。
総務部総務課長 佐藤 学
企画部部長 佐々木 有
企画部企画一課課長 白崎 茜
――――――――――――――――――――
信じられない。
佐藤さんから離れられるだけじゃなくて、私の昇進が書かれている。まさか、自分が課長に昇進するとは思わなかった。
メールの文字を読んで叫びたくなった。だが、会社にいるので、デスクの下でガッツポーズをする。
佐藤さんに告げ口される可能性もあったが、しっかりセクハラとパワハラに対処してくれる会社でよかった。
――――――――――――――――――――
春になった。企画部でお花見をするために、仕事を早く切り上げ、みんなで公園に向かっている。
佐藤さんがいなくなった企画部は、新たに佐々木さんを部長に迎えて、明らかに作業効率がよくなっている。
休職していた柿口さんも戻ってきた。痩せこけて青白かった顔も今ではふっくらとして元気そうで何よりだ。
お花見では、お酒も進みぶっちゃけトークとなった。
実は、私が入社する前にも、佐藤さんによるセクハラとパワハラ被害者がいて退職者が絶えず、他の部署に異動した人も合わせると十人くらいが去っていたとのこと。
コンプライアンス部に何人も相談していたが、証拠がなく、退職者が増えるのに、会社は動けなかったらしい。
それを聞いて、自分が幸せになっただけではなくて、これ以上被害者が増えなくてよかった、と安堵した。
前にお礼をかねて美香と飲みに行ったときのことを思い出す。
「ゴリ、やっぱり強いね。さすがゴリだよ」
「美香、私は今までのただのゴリじゃない。守りも周到なシールドを持ったゴリだ!」
ゴリラの真似をして胸を叩く。
「ゴリ、それ自慢げに言うセリフじゃないよ!笑えるー」
二人でお腹が痛くなるまで笑った。
嫌な目にあったけど、この会社に入ってよかった。今はそう思える。
これからも嫌なことがあるかもしれないけど、シールドを持ったゴリラは無敵。
桜の木を見上げて、ニヤっと笑った。
ゴリラとシールド 滝川 千夏 @Momomo123
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます