変 化
女の顔は今はまったく忘れてしまった。ただ大工か何かの娘らしかったという感じだけが残っている。むろん長屋
中村と自分はこの私塾の教師であった。二人とも月給を五円ずつ
二人は朝起きると、両国橋を渡って、一つ橋の予備門に通学した。その時分予備門の月謝は二十五銭であった。二人は二人の月給を机の上にごちゃごちゃに
予備門へ行く途中両国橋の上で、貴様の読んでいる西洋の小説のなかには美人が出てくるかと中村が聞いたことがある。自分はうん出てくると答えた。しかしその小説はなんの小説で、どんな美人が出てきたのか、今ではいっこう覚えない。中村はその時から小説などを読まない男であった。
中村が
学校を出ると中村はすぐ
日本へ帰ってからまた逢わなくなった。すると
昔の中村は満鉄の総裁になった。昔の自分は小説家になった。満鉄の総裁とはどんな事をするものかまるで知らない。中村も自分の小説をいまだかつて一
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