火 鉢
目が
ところへ妻がちょっと時計を拝借とはいって来て、また雪になりましたと言う。見ると、細かいのがいつのまにか、降りだした。風もない濁った空の途中から、静かに、急がずに、冷刻に、落ちてくる。
「おい、去年、子供の病気で、
「あの時は月末に二十八円払いました」
自分は妻の答えを聞いて、座敷暖炉を断念した。座敷暖炉は裏の物置きに
「おい、もう少し子供を静かにできないかな」
妻はやむを得ないというような顔をした。そうして、言った。
「お
お政さんが二、三日寝ていることは知っていたが、それほど悪いとは思わなかった。早く医者を呼んだら
まだ、かじかんで仕事をする気にならない。実をいうと仕事は山ほどある。自分の原稿を一回分書かなければならない。ある未知の青年から頼まれた短編小説を二、三編読んでおく義務がある。ある雑誌へ、ある人の作を手紙を付けて紹介する約束がある。この二、三か月中に読むはずで読めなかった書籍は机の横に
すると玄関に車を横付けにしたものがある。下女が来て長沢さんがお
座敷へ上げて、いろいろ身の上話を聞いていると、吉田はほろほろ涙を流して泣きだした。そのうち奥の方では医者が来てなんだかごたごたしている。吉田がようやく帰ると、子供がまた泣きだした。とうとう湯に行った。
湯から上がったらはじめて
妻が出て行ったらあとが急に静かになった。まったくの雪の夜である。泣く子はさいわいに寝たらしい。熱い蕎麦湯を
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