第三夜
こんな夢を見た。
六つになる子供を
左右は青田である。
「
「どうして
「だって鷺が鳴くじゃないか」と答えた。
すると鷺がはたして二声ほど鳴いた。
自分はわが子ながら少し
「ふふん」と言う声がした。
「なにを笑うんだ」
子供は返事をしなかった。ただ
「お
「重かあない」と答えると
「今に重くなるよ」と言った。
自分は黙って森を
「石が立ってるはずだがな」と小僧が言った。
なるほど八寸角の石が腰ほどの高さに立っている。表には左
「左が
「遠慮しないでもいい」と小僧がまた言った。自分は仕方なしに森の方へ歩きだした。腹の中では、よく盲目のくせになんでも知ってるなと考えながら一筋道を森へ近づいてくると、背中で、「どうも盲目は不自由で
「だから負ってやるから
「負ってもらって済まないが、どうも人に
なんだか
「もう少し行くと
「なにが」と
「なにがって、知ってるじゃないか」と子供は
雨は最先から降っている。
「ここだ、ここだ。ちょうどその
雨のなかで小僧の声ははっきり聞こえた。自分は覚えず留まった。いつしか森の中へはいっていた。一間ばかり先にある黒いものはたしかに小僧の言うとおり杉の木と見えた。
「お父さん、その杉の根のところだったね」
「うん、そうだ」と思わず答えてしまった。
「文化五年
なるほど文化五年辰年らしく思われた。
「お前がおれを殺したのは今からちょうど百年まえだね」
自分はこの言葉を聞くやいなや、今から百年まえ文化五年の辰年のこんな闇の晩に、この杉の根で、
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