第2話 おまけ「最後の声」余談話

 *須賀原家三姉妹の最初の作品。一万円を巡って「今年一番面白かった事」を三姉妹で語るだけのまったり話です。


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「あー面白かった」「お腹痛い」


 佳奈と美恵が仰向けに転がりながらまだ思い出し笑いをしている。お茶を持って来た志帆は、二人を起こしながらもう一つ思い出した。


「そういえば、まだ面白いネタ残ってんだけどね」


 興味深げに志帆を見る二人に、にっこり笑って話し出す志帆。


「先輩の旦那さんの話しなんだけど、自分の車を車検に出して代車がきたんだって。で、ガソリン無くなったからスタンドに行ったらしいのね。あ、セルフじゃないとこね。


 旦那さんいつも通りの向きに停めちゃって、店員さんに「給油口逆ですよ」って教えてもらって律儀に車反対に直したんだって。いい人なんだよ。本当。


 で改めて店員さんに「給油口開けて下さい」って言われてね。旦那さん「ちょっと待って下さい…… これかな?」って開けたのが、トランク。


 店員さん苦笑いしながら「閉めておきますね」って言って閉めてくれたんだって。旦那さん恥ずかしくなって「すみません慣れてないモノで…… これかな?」と言いながらボンネットオープン!


 流石に店員さんも笑うの必死にこらえながら「シートの近くにないですか」って言ったんだって。


 旦那さん「本当にすみません。あ、これかな…… ?」って言って引っ張ったレバーで、旦那さんのシートが思いっきりリクライニング!」


 我慢していた二人から高らかな笑い声が部屋中に響く。


「もうね、店員さん大爆笑でねぇ。旦那さん何とか給油して帰ってきたんだけど、先輩に言った言葉が「俺もうあそこに行けない…… 」って恥ずかしがって言ったんだって。先輩も大笑いよ。…… ね?面白いでしょう」


 笑い転げる二人にしてやったりという顔をする志帆。お腹を抑えてヒーヒー言う佳奈に、何とか起き上がる美恵。


「だ…… 駄目だ。やっぱり志帆姉ちゃんには勝てないなぁ。私の二番目はほっこりものだもん」


「え?美恵もあるの?」


 お茶を飲みながら興味深げに聞く志帆。佳奈もようやく起き上がる。


「友達のおじいちゃんネタでね。おじいちゃん囲碁の本が欲しかったんだって。で、友達が「アマゾンで買ってあげる」って言ったら「そんな遠くまで行って買わなくてもいい」っておじいちゃんに止められたの」


「ブハッ!じいちゃん可愛い」「確かに」


 吹き出す佳奈に微笑みながら頷く志帆。お年寄りらしい勘違いである。


「私はねぇ、志帆姉の葬式話で思い出したものあるなぁ。友達のおじいちゃん亡くなって葬式あげていた時なんだけどね。親族いっぱい集まるじゃん。でその中に四、五歳くらいの賑やかな男の子いたんだって。


 でもあんまり煩いから親戚の叔父さんがね「うるせーぞ!このクソ坊主!」って注意したら、お坊さんの読経がピタッと止まったんだって。


 10秒くらいしてから自分の事じゃないなってわかったお坊さんまた読経始めたんだけど、出席者全員笑い堪えるの大変だったんだって」


「うわぁその場に居なくて良かったぁ。私吹いてたよ、多分」


 流石に笑い疲れたのか、苦笑いの美恵。志帆はフフッと余裕の笑みを浮かべている。


「まあ、二回戦も志帆姉の一人勝ちかぁ。今年こそは志帆姉に勝つよ!」


と新年早々妙な目標を掲げる佳奈。

三姉妹の新年の行事はどうやら続くらしい。



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他人の笑い話もある種親しい人だけに明かされる秘密。

秘密も見えない扉だよなぁ、と考えて遊んだ作品です。

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見えない扉 風と空 @ron115

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