第9話
ヘビオは私の顔と財布を何度も見返してから、戸惑ったような表情で受け取りました。変でした。怒ることもなければ、驚くこともなく、あっさりと受け取ったんです。そして、わざわざどうもありがとうって、ちょっと
私はなぜか寒気を感じて体が震えました。何かがおかしいと思いました。だって私は、返せ返せと脅されて、襲われて、必死の思いで財布を返しに来たんです。それなのに、ヘビオはまるで今まで何も知らなかったかのような態度を私に見せたんです。じゃあ、今までのことはなんだったのって、関係のない人たちはどうして知っていたのって思いました。
その時です。私の耳に、何かが入ってきたんです。
何かって、何かです。ぬるっとした、冷たく湿った水のような感覚がしました。ちょうど海やプールの中で耳に水が入った時みたいに。雨じゃありません。それよりも気持ちの悪い……そう、ナメクジが両耳の中に入ってきたような感じでした。それがどんどんと奥へと進んでいって、
すると体中が
返せ。俺から盗んだものを返せって。
私がそう言ったんです。同じ声でした。電車内の痴漢と、クラスメイトの
そして、その正体はヘビオじゃないってことも。
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