第6話
同じです。あの電車内の痴漢と同じ、湿った聞き取りにくい声でした。私は怖いのと痛いのと苦しいのがぐちゃぐちゃになって、
本当のことです。高校に問い合わせたら分かるはずです。先生も知っています。だってそのあとすぐに遥奈が意識を失って倒れましたから。無事とは聞いていますが、そのまま病院へ行ったそうなので詳しいことは知りません。私は保健室で簡単な
いいえ、遥奈に財布のことは話していません。でも彼女は知っていました。どうしてって……分かりませんよね? 私も、その時は全然理解できませんでした。ただ、あの財布を持っていることは絶対に良くない。ヘビオに返さないといけない。このままだと誰かに殺されると、はっきり思いました。
それから私はもう誰とも話さず、ずっと何かに
でも校内ではそれ以降何も起きませんでした。放課後になると私はすぐに学校を出て帰り道を急ぎました。ヘビオに財布を返すために、いつも会う
下校の途中にアーケードのある賑やかな商店街を通るのですが、そこでも私はなぜかみんなに目を向けられていました。いつも通りかかる魚屋のおばさんや、黒いエプロンを付けた喫茶店のマスターや、揚げ物屋のおじさんとか花屋の人とか、みんな立ち止まって私のほうを見ていました。そして口々に、返せ、返せと言ってきました。
本当です。みんな変になっていたんです。いえ、もしかすると、私が変になっていたのかもしれません。通りを行き交う人も同じです。こちらに向かってくる人たちも、みんな私を見ていました。だから私はうつむいて逃げるように歩き続けました。夕方の混雑する頃だったので、走ることもできません。人の流れに乗りながら、前をゆっくり歩くお
その直後、お爺さんに腕を
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