第6話 行軍そして襲撃
魔物たちとの戦いは一晩中続いた。魔物たちの軍勢が退却したのは日が昇り始めた頃だった。破壊し尽くされた町の中を視察して回った師団長ニクスは、横たわっているおびただしい数の魔物たちの遺体の中に立つ銀の鎧の美青年を見つけた。デュラハン・アルコン・ドレイクだった。
町での魔物討伐の功績が認められたドレイクは、師団長ニクスの命令で、生き残ったアウドムラ正規軍の兵団と共に町を出て荒野の上をアウドムラ王都へと移動することになった。師団長のニクスはドレイクと同じ年の頃の戦士だが、ドレイクよりも体が大きく筋骨隆々である。兵団の隊列の先頭で白馬に乗る姿は威風堂々としていた。
その隊列の最後尾で、与えられた馬に揺られながら、従者のヨードが隣の馬のドレイクに小声で尋ねる。
「どうします? ここの国王に会えるのは、アルラウネ公からの和解の意思を伝え、密書をアウドムラ国王にお渡しするという我々の目的を果たすうえでは、またとないチャンスですが、どうも都合が良過ぎやしませんかね」
「確かにな。だが、不用意に身分を明かす訳にもいくまい。この国の中にも戦争の終結に反対している者は多いはずだ。特に軍人には。戦争継続派の人間にとって我々は邪魔な存在だ。逆に戦争終結派もいるはずだから、その者たちの協力を取り付ける必要がある。戦争は国王一人だけでは止められんからな。だから、それが見極められるまで、しばらく様子を見よう。まずは、この軍団の
「そうですね。でも、気が短そうな奴だから、きっと戦争継続派の中の強硬派ですね。賭けてもいいですよ」
「雰囲気で頭の中までは分からんさ」
「ですかね。ところで、ひろしがいませんが、見ましたか?」
「いや、見ていないが」
「あーあ、ミノタウロスにでも食われちまいましたかね。かわいそうに」
「生きていたら、この一団の後を追いかけてくるさ」
「そこまでの忠犬ですかねえ」
「いや、そうではなくて、あいつは、あの田舎の繁華街程度の宿場町であれだけ興奮したんだ。これから行く王都の貴婦人たちを見たらどうなることやら」
「なるほど。違いねえですね。都会の美人目当てに、あの馬鹿犬なら死んで
振り返ったヨードの視線の先で、盛り上がった地面が土煙をあげながら、猛烈な速度で近づいてきていた。
「あら、ひろしの奴、一晩で随分とデカくなった……みたい……って、あれは違いますよね! 何か地面の中を進んできますよ!」
兵士の誰かが叫んだ。
「敵襲! 後方から魔物が地中を進んできます!」
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