第7話 共闘

 他の兵士がラッパを吹き鳴らす。それを合図にしたかのように、地面の中から一匹の蛇が飛び出してきた。その巨大な蛇は背中に翼を持ち、広げた口の中には鋭い牙を並べている。


「ニーズヘッグだあ! 逃げろお!」


 逃げ惑う兵士たちとは逆に、隊列の前方からこちらに馬を進めてきた師団長のニクスが低く太い声を飛ばした。


「魔法師隊、前へ! 魔法バリアで防衛線を保て! 弓矢隊は陣形を組んで発射に備えろ!」


 黒ずくめの魔法師たちは最前線に立ち並ぶと、ニーズヘッグに向けて掌を向けた。すると、その前に大きな光の板のようなものが浮かび、ニーズヘッグの前に立ちふさがる。大口を開けて吠えたニーズヘッグは、口から炎を吹いた。炎は光の板に当たると無効化され、四方に散って消える。それを見てギョロリと目をむいたニーズヘッグは長い尾を高く持ち上げて、前方に一振りした。尾から放たれた電流は固まりとなって飛んでくると、光の板を弾き飛ばした。そのまま魔法師たちを直撃する。凄まじい爆音と共に魔法師たちが飛ばされていった。


 ニクスが声を張る。


「矢を放てえ!」


 弓矢隊が矢を次から次へと放った。しかし、魔獣に通用するはずがない。矢はニーズヘッグの翼の一振りで、すべて弾き飛ばされてしまった。弓矢隊の兵士たちは恐れをなして後退する。


「ええい、かくなるうえは!」


 腰から剣を抜いたニクスは、あぶみで白馬の腹を蹴って走らせると、剣を高く掲げたまま雄叫びをあげてニーズヘッグに突進していった。


「ニクス! 無茶をするな!」


 ドレイクも剣を抜くと、ニクスの後を追って馬を走らせた。


 暴れる魔物が巻き上げる土煙が二人の姿を飲み込んでいった。


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