第5話 死闘

 店の入り口の所に立った鎧姿の兵士が大声で店内に叫んでいた。


「ミノタウロスの群れが来ているんだぞ! それにやさぐれドワーフ連中とちょい悪エルフどもが加わった大軍勢が攻めてきているんだ! 急げ! 早く通りに出て防御陣形を……」


 壁を突き破ってきた太い腕に肩を掴まれたその軍人は、悲鳴と共に外に引き出された。半人半獣のミノタウロスがその軍人の体を小枝でも折るかのように二つ折りにして、再び店の中に放り込む。店の中にいた傭兵たちは、その無残な遺体を見て腰を抜かし、一斉にその場から逃げ出していった。


 椅子から腰を上げ、青いマントを脱ぎ捨てたドレイクは、腰の剣を勢いよく抜くと、店の外へと飛び出していった。


 通りではアウドムラ正規軍の兵士たちと魔物たちが戦っていた。傭兵たちは戦いに加わる気配は無く、ただ逃げている。ミノタウロスの怪力に苦戦している一人の兵士に、やさぐれドワーフが横から襲い掛かった。棍棒こんぼうでの攻撃をかわした兵士の背中に、ちょい悪エルフが飛び乗り、ナイフを突きたてる。悲鳴を上げた兵士にミノタウロスが斧で一撃を加えてとどめを刺した。


「おのれ、三対一とは卑劣な!」


 ドレイクは白髪を振り乱して走っていくと、近くにいたミノタウロスの体を真っ二つに斬るや、その刃についた血をぬぐいもしないで、魔物たちの軍勢の中に突進していった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る