第4話 酒場にて

 その店の中は客でにぎわっていた。椅子に座しているドレイクの前には、美味おいしそうな料理が並んでいる。ジビエ料理とイノシシの煮込みだ。向かいの席のヨードが生唾を呑んだ。


「うわあ、美味うまそうだなあ。さあ、食いましょう! いただきまーす。……う、美味い!」


「特別な夜にふさわしい特別な料理ということか。うん、本当だ。美味い」


「ですが、ドレイク様、その特別な夜というのは、どうもですね」


「というと」


「さっき、ひろしを門外に放り出しに行った時に小耳に挟んだのですがね、視察隊が来るって話、あれはどうも実質的には駐留軍のようですね。完全武装の師団が王都からやってくるみたいですよ」


「わざわざ王都から?」


「ええ。それに、気付いていますか」


「うむ。店の中や通りの連中だな」


「浪人風の猛者もさばかりが目立ちます。あれはたぶん、この国の政府から雇われた傭兵たちでしょう」


「この町に入る時も門周りの警備が随分と厳しかった。これは、何らかの外敵に備えているということか……」


「かもしれやせんね。この町そのものが王都防衛の前哨ぜんしょう基地にされているのかもしれません。つまりデコイですよ。ここはってことです」


「ひろしは大丈夫なのか」


「ああ、大丈夫ですって。犬なんですから。町の娘からふんだくったを咥えたまま、走っていきました。当分、町に入れないでしょうが、その方がここの住人には迷惑にならずに済みます。特に若い女には」


 溜息を吐いたドレイクがフォークに刺した猪肉を口に運ぶと、背後で男の声がした。


「政府に雇われた傭兵は全員直ちに出動しろ! 門が破られた。敵がなだれ込んできている!」

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