第3話 去り行く女

 陽が沈み切った頃、デュラハン・アルコン・ドレイクの一行は町へと辿り着いた。アウドムラの王都を囲む高い城壁の外にある、小さな宿場町だ。店の灯りに照らされた細い通りを異国の商人や流れ者の大道芸人、騎士崩れの荒くれ者などが行き交っている。


 フードの中から疲れた顔でヨードが言った。


「ドレイク様、さっきのグレンデル討伐には体力を使いましたね。何か食べて体力回復といきましょうよ。空腹で死にそうだ」


 ブルーのマントに身を包んだドレイクは長い白髪の中で片笑んだ。


「おまえは逃げ回っていただけじゃないか」


「し、失礼な。ドレイク様が戦っている間、俺はこのご婦人をエスコートしていたんですよ。怪我させちゃ、ドレイク様の名誉に傷がつくでしょ」


 クスリと笑ってから小走りで前に出た金髪の女は、通りの先を指差しながら言った。


「その先に美味しい料理屋さんがあります。今夜は王都から視察隊が回ってくる特別な夜ですから、混んでいるかもしれませんけど、味は間違いないですから。では、私はここまでということで。失礼します」


 一礼した彼女は、きびすを返すと通りの奥へと去っていった。


 ドレイクが手を振って見送っていると、背後で女性の悲鳴が響いた。


「キャー! ちょっと、なによ、この犬、なんでスカートの中に入ってくるの!」


 強く溜め息を吐いたヨードが項垂れて言う。


「ひろしか……。あの馬鹿犬が」


「町の娘を見て我慢できなかったようだな」


「仕方ない。ちょっと門の外に放り出してきます」


 ヨードは悲鳴が響く衆人の方へと歩いていった。


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