第5話 エピローグ

 その後、親から聞いた話によると主犯格である泥門は逮捕されたらしい。遺体の状況から、落下時以外にも殴打された跡が見つかり、また仲間の証言等から強制わいせつ致死の罪に問われたらしい。しかも、時効成立ギリギリだった様だ。

 流石に今回は親の力を持ってしてももみ消せなかったようだ。なんせ、証拠の動画があるから。

 そして、灯ノ下塔子は母親の親友だったという事実も判明した。泥門達とは特に仲が良かった訳でもないため、お店に来た時にも気付かれなかったらしい。もちろん母親は知っていたそうだけど。


 全てが終わった夏休み最終日の夜。俺は再び灯台を訪れた。暫く規制線がはられ近寄れなかったが、泥門が逮捕起訴されてから規制が解除された。

 遺体が埋められていた場所にはお花やお菓子などが供えられ、そして彼女のスカーフもそこにはあった。母親が置いたものだ。

 学生時代親友同士だった二人は、お互いのスカーフを交換しあったらしい。だから、母親が持っていたスカーフは灯ノ下さんの物で、彼女に返すんだと言って置いたとの事だった。

 砂やほこりだらけの螺旋階段を再び上る。きっともう会えないだろうな、そう思う。彼女は以前こう言っていた。

 『本当の自分を見つけてくれる人を待っている』と。

 遺体が見つかった今、彼女がここにいる理由が無い。

 そんな風に思いながら階段をのぼり切り、灯器を横目にバルコニーに出ると、月明りを浴びた灯ノ下さんが佇んでいた。

 軽く微笑んだ彼女の胸元には、真っ赤なスカーフが巻かれている。

 そして、天に昇って行くようにゆっくりと浮かび上がると、真っ暗な空の海へと沈んでいくように、その姿を消した。


 ありがとう


 声は聞こえなかったが、彼女の唇がそう動いたように見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空へ沈む 玄門 直磨 @kuroto_naoma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ