第2話  私のせいではない!!!

……どうしてこうなった。



 何も分からないまま、私は自宅から引っ張り出され、縛り上げられ、護送用の馬車に乗せられていた。

 私の両隣には鈍く光る甲冑に身を包んだ兵士が2人。

 あのー、その槍しまってくれませんかね?いやもう、圧が、圧が!!!何もしてませんから!!!私!!!か弱い市民ですから!!戦闘スキルももってませんから!!!

 と、心の中で叫んだところで伝わるわけもなく。

 乗り心地の悪い鋼鉄製の馬車は、地面の凹凸の影響をモロに受けながらガタゴトと進んでいく。


 護送用の馬車なので窓はついておらず、外を見ることは出来ないが、子供の頃から過ごした町なのである程度の地形は分かる。おそらく今はまだハザル大通り。

 ハザル大通りには庶民的なお店や市場、お手頃価格のホテルなどが軒を連ねている。

 私の店はその端の方にあり、ハザル大通りを抜けると、高級ホテルやブランド店が立ち並ぶキビルア大通りに繋がっている。キビルア大通りを通り抜けると王宮があるので、王宮とキビルア大通りとハザル大通りは南北に一直線上にあるってわけ。


 ついでに国の大体の地形を説明しておくと、王宮の後ろはスー山脈になっていてそれを超えると隣国であるエイルマ帝国に入る。

 キビルア大通りの東西には貴族街が広がっていて、ハザル大通りの東西にはごくごく普通の住宅街になっている。

 そして、国境沿いには畑や牧場、あとはスラム街なんかがバラバラに分布している。


 とかなんとかいってるうちに、キビルア大通りに入ったらしい。馬車がガタゴトいわなくなるからすぐに分かる。もうすぐ王宮に到着するってことね。

 

 そしたら、私の王族殺害未遂についての話が……王族殺害未遂の容疑?

 いや、心当たりのこの字もないですけど!?お会いしたこともないし、なんなら見たこともないのに!しかも殺害出来るようなスキルも持ってないわよ!!!


 穏やかとは言い難い心と裏腹に表情筋をピクリとも動かさず硬直したままの私を、こいつは抵抗しないと判断したのか、両隣の兵士が馬車をおりる。

 止まったってこと?ってことは……


 王宮に着いたってことじゃない!!


 え、まってやばいやばい。いやでも、私身に覚えないし、多分勘違いとか人違いだと思うし、説明したら特に問題なく穏やかに帰してもらえるはず!!

 そう、だから落ち着けば……


「降りろ、十六夜凪。」


 降りた兵士から声をかけられる。

 渋々馬車から降りると、


 別世界が広がっていた。


 贅を尽くした、という言葉がこれほど似合う建物はどこを探しても見つからないと断言できるほどにきらびやかな王宮は、まっすぐ目を向けられないほど輝いていた。

 シミひとつない白亜の外壁。金色に輝く屋根。磨き抜かれて鏡のように陽光を反射する窓。淡いブラウンとピンクのレンガできっちりと積まれた城壁。人が何人通れるかすら考えたくなくなるほどの大きな城門。片手で数えられないほどある塔の上は勿論、小さな窓の枠に至るまで細部に丁寧に施された装飾。


 金かかってんなぁ……

 つい逮捕されたということも忘れてしまうほど壮大で豪奢なその城に頭がどうでもいいことを考え始める。

 こんなお金うちの国にあったっけ?いや、決して貧しい国というわけではないのだが、明らかにスケールがおかしいだろう。世界で一番裕福な国と呼ばれるミリヨナ王国だってこんな城は建てないんじゃないの?

 最近増税があったのだが、こんなことに使われてるんならキレる。ブチギレる。あくまで妄想だけど。


「おい、行くぞ。王族の方々が直々に犯人に判決を下すそうだ。」


 え、あ、そうなの?てっきり王宮の警備隊の人とかの方に行くのかと思ったんだけど。勘違いとはいえ、殺人未遂の犯人を自分たちの前に呼び出すなんて、何考えてるんだろう。あ、この兵士たち、実は凄く腕が立つとか?完全警備なら、まあわからなくもない……ような?


 まぁ、事情を確実に知っている本人達に直接話せるのは、説明がしやすくて楽かもしれない。良かったということにしよう、うんそうしよう。とにかく行くしかないんだから。


 私は身の潔白を証明するために兵士のあとに続いて王宮へ入った。





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追放されたらスキルが覚醒したので、引きこもり帝国を作ろうと思います。 来夢苑燈 @raimu-end

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