追放されたらスキルが覚醒したので、引きこもり帝国を作ろうと思います。

来夢苑燈

第1話 ユニークスキル”作成”

「5……4……3……2……1……ゼロッ!!」

 目の前が赤い光に覆われた。

 光は段々と弱まっていき……光源のあった場所には、赤い宝石のようなものを埋め込んだ小さな石版があった。

「やった!!!成功したわ!!!これで持ち運びのコンロが作れる!!」 

 私はあまりの嬉しさに、周囲にうず高く積み上げた鍋やら瓶やらをひっくり返して飛び回った。

 なんかガラスが割れたような音がしたけど気のせい気のせい!!!





 私は十六夜凪(いざよいなぎ)。名前の通りの16歳。

 去年15歳で成人を迎えた私は、長年手伝っていたおじいさんの薬屋を離れ、

街で小さな雑貨屋を始めた。

 祖父は、ユニークスキル”薬師”をもっていて、しかも周囲の”薬師”持ちよりもスキルの性能がいいこともあって、祖父のお店はいつも大繁盛。

 祖父の”薬師”は、生産系スキルの中でもレアなスキルで、私はそんな祖父から薬や回復魔法などについて学んでいた。

 じゃあ、私のスキルも”薬師”なのかと言われるとそれは違う。

 私のスキルは”作成”だ。特に何にも特化していない、ごくごく普通の生産系スキル。

 だから、特に専門店などを開くこともせず、当たり障りのない雑貨屋を開くことにしたのだ。

 ただ、私の家系は代々生産系スキルを持って生まれてくる。

 両親や祖父母は、それぞれ違う専門生産系スキルをもっていて、彼らにありとあらゆる生産系魔法を教え込まれた私は、ベーシックな”作成”持ちなのにもかかわらず、大抵のものが作れるようになっていた。

 だからなのか、他の”作成”持ちの子と話すと、なんか私だけ作れる種類が多いような気がするが、まあそんなに大したことでもないので放っておく。 

 色々なものが作れるとは言っても別に使う用事もないし、教えてもらったレシピの中には、素材がレアすぎるものも多く、実際に作れるものはそんなに多くない。

 接客業はとても苦手なので、絶対に店はやらないと決意していたのに、親戚一同から全力で説得され、店を開くことになってしまった……が、自分で色々作れるのは楽しいので、今は結構満足している。



 さっきも言ったように、私は作れるものの種類がとても多い。

 だから、私のお店も結構色んなものを扱っている。

 雑貨はもちろん、食料品、薬、衣服、家具、ちょっとした楽器に、最近は魔道具にまで手を出し始めた。

 当然魔道具と言っても、なんか火が出る杖とか、変なのを呼び出す魔法陣とか、結界とかいうものがはれる札とか、そんな大層なものは作ってない。

 私が作れるのは、日常にある、冷蔵庫とか、コンロとか、照明とかその程度である。

 因みにさっき私が作っていたのは携帯用コンロ。

 大体魔道具というものは、石版とか紙とかに術式を書くことでできるのだが、術式自体めちゃくちゃに細かく、魔力をのせながら書かないといけないとかなんとかで、作れるのは一般に”魔具師”というユニークスキル持ちに限定される。

 けれども、”魔具師”である祖母から魔道具づくりを教え込まれた私は、簡単な魔道具くらいなら作れるようになってしまったのだ。

 ただし、コンロというものは、火魔法はもちろんのこと、調整魔法という魔法の出力を調整する魔法を搭載するため、結構サイズがデカくなる。

 そこで私は、火魔法を魔石という魔力のこもった宝石のような石に任せて、調整魔法の術式を限りなく削減した超絶ミニサイズ石版を作り上げたのである。

 まさか、術式の一部を魔石ににしてしまうなんて、私くらいしか思いつかないだろう。

 なんと言っても、魔石は超高級品。いくら難しいとはいえ、書くだけでできる術式と組み合わせるなんて、コスパ的に論外中の論外。

 だが!!!なんと私の父は魔石を作れるのである!!!!

 魔石を作れるのはユニークスキル”魔術師”か、”魔鉱職人”を持つ者だけ。

 ”魔鉱職人”とは、”鍛冶師”の派生で、”鍛冶師”は普通の金属を加工するのに対し、

 ”魔鉱職人”は魔鉱と呼ばれる、魔力伝達に優れた特殊な鉱物の加工に特化している。

 そんな父から、幼少期から鬼畜な修業をつまされた私は、小さな魔石くらいなら作れるようになってしまったのである。


そんなわけで、この携帯コンロ用のミニ石版をこの中に入れれば……ドカンッ!!



「十六夜凪はいるか!!!貴様を王族殺人未遂で連行する!!!!!」










…………へ?

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