第7話 最強魔術師、チャンスを窺う

「ご飯の時間だよ〜」


デバリアがそう言って薬の入ったご飯を、檻の中で鎖に繋がれたノアに見せびらかす。


「……ご、ご飯」


「欲しい欲しいね」


「よこせ! よこせ!」


「それ、私に言ってんの?」


嘲笑し、ご飯を焦らすデバリアに、ノアは思わず声を荒らげてしまう。


が、そんなことをデバリアが許すはずもなかった。


「口の聞き方がなってないね、ノア君」


そう言って檻の中に入り込んできたデバリアは、ご飯を貰うため地面に近づけたノアの顔を容赦なく蹴りあげる。


檻の中に鈍い音が響いた。


「……ッうう」


「あのさ? よこせじゃなくて。ください、でしょ?」


「っく、ください。ご飯ください!」


顔面を蹴られ、蹲るノアに加減もせず、次は腹を蹴りあげる。


「……ッうぐ」


ノアは苦しんでいた。悶えていた。


だが、デバリアは容赦なくノアの頭を踏みつける。


「ふっ、気持ち悪い」


「……く、くださ……」


めげずに懇願するノアにデバリアは、思わず吹き出し、妙な笑顔をみせる。


「さあ、ご飯だよ〜」


そう言ってデバリアは、腐った白米に薬をまぜた物をノアのいる床にぶちまけた。


呆気に取られたような表情を浮かべるノアを横目に、容赦なく足でぐちゃぐちゃに踏みつける。


もはや見ただけで吐いてしまいそうなほどだ。


しかし、ノアは食べた、そのご飯を食べようと、汚い床を必死に舐めた。ただひたすら舐めた。


「ふはははは! 滑稽じゃない!」


そう、高笑いすると、デバリアは自室へ戻って行く。


こんな日が何週間と続いたのだ。



♢ ♢ ♢



「これは……成功……?」


早朝、薄暗い檻の中、僕は目を覚ました。


あれから、拷問の日々は続き、すっかり重度の中毒者になってしまったものの、なんとか薬物耐性を手に入れることに成功したらしい。


一度目の人生で食らっていたおかげか、クスリの原料解明は容易いことだった。


そこから魔術の知識を振り絞り、薬物の耐性魔術を自分に付与することで、耐性を得ることが出来た。


うん。我ながら上出来だ。



すると、どこからともなく足音が聞こえてくる。


「ノアく〜ん」


「…………!」


思わず体が拒絶を起こしてしまいそうな声が地下に響く。そう、デバリアだ。


「ふふ、私を睨んでるってことは、まだ大丈夫みたいだね」


デバリアは余裕の笑みを浮かべ、デバリアを必死に拒絶する僕を見つめる。


「お前は何をしに来た!!」


僕がそういうと、デバリアは呆れたような表情を浮かべ手元の電流スイッチに手をかける。


「……ッうわああああ?!」


「口の利き方がなってないよ。そろそろ学習してもらわないと困るな」


そう言ってデバリアは檻の中へずかずかと入り、鎖で繋がれた僕の頭を踏みつけ、目一杯の力で地面に擦る。


「い、たい……いたい……」


「いいから謝れよ。はやく、土下座」


「……ッ!」


抵抗の余地がない僕は必死に頭を下げる。必死に下げる。


悔しいが仕方ない、ここで歯向かえば再び電流を流されるだけだ。


「ねえ。さっきから誠意が伝わってこない」


そんなデバリアの発言に、僕は吹っ切れたように、出血してしまうほど額を地面に擦り付けた。


「あははっ! 気持ち悪っ!」


しかし、デバリアは、満足することなく、さらにグリグリと擦り付ける。


「ほらほら~っ! もっとでしょ、もっと~♪ ふふ、ノアくん滑稽〜♪」


視界を血液が邪魔をする。痛い苦しい……。


僕は悶えた。


耐性がなく、クスリに侵されていた頃よりも耐性を手に入れ、自我を持った今の方が余計に苦しく感じる。


だがしかし、今は我慢だノア=ホワイト。チャンスを伺え。


「ははっ! 満足満足っ!」


「ふふふ。またね~、私の奴隷くんっ♪」


あれから数分後、やっと満足したデバリアは、僕を嘲笑うと、高笑いをしながら自室へ戻っていった。



……やれやれ、完璧だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天才魔術研究家の俺。裏切られて死んだけど、死に戻りしたので魔術を極めようと思う 〜無能スキルだとバカにされ殺された俺。二度目の人生では、誰も知らない魔術知識で無能スキルが最強に。さぁ、復讐を始めよう〜 巨乳美少女 @momosetakoyaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ