第6話 拷問の日々
恐らく馬車でデバリアと一緒に運ばれているだろう僕は心の中で呟いた。
デバリアは作戦が上手くいった、とでも思っているのかニヤニヤしている。
だが、僕は知っている。なぜなら二度目だからだ。
一度目の人生では、無能スキルな僕を強くしてやる、という名目でデバリアへ連れていかれた。
しかし、待っていたのは拷問の日々。
弱かった僕は抵抗できる訳もなく、身も心もボロボロになって捨てられた。
デバリアは見たことも無い僕のスキル《無限魔力》について興味をしめしたのか、スキルを発動させるまでいたぶった。
しかし、スキルを使える日が来ることはなく、拷問の日々は続いた。
満面の笑みで僕をぞんざいに扱うデバリアの顔は今でも忘れられない。
つまるところ、こいつは人をいたぶって快感を得る異常者だ。僕がターゲットにされている理由は親がいない孤児だからだろう。
有能スキルを使わせる、というのも目的の一つではあるのかもしれないが、真の目的は僕をいたぶること。
僕は知っている、だがら一番良いタイミングで決める。復讐をする。
それまで耐えるんだ、復讐のチャンスを伺うんだ。
♢ ♢ ♢
「おはよ〜、有能なノア君」
あれからどのくらい時間が経ったのだろうか。
薄暗い檻の中、冷たい地面、どうやら牢獄に閉じ込めらている。
そして牢獄の中の椅子に、鎖で頑丈に繋がれた僕、正面にたつデバリアは薄ら笑みを浮かべている。
と、僕あたりを見渡し、あたかも初めてここへ来たかのような素振りを見せ、口を開く。
「こ、こは、?」
「ふふ、ここは私のお家だよ。そして、ここは地下牢獄〜っ」
デバリアは僕に向かって笑みを浮かべる。やれやれ、滑稽だ。
様子から察するに僕を疑っていない。むろん、疑うはずもない。滑稽なデバリアは見下すような目で見つめている。
仕方ない、焦ったふりでもしておこうか。
「──っ、デバリアっ! い、いったい僕をどうするつもりだ……!?」
「どうするって。決まってるでしょ」
そう言ってデバリアは僕に顔を近づけ、強引に髪を引っ張りあげる。
「君の有能スキルを私の為に使うの。君は今日から私の奴隷なのっ♪」
「奴隷……? どうしてこんな横暴なやり方をとるんだっ!」
と、言ってみるが、聞くまでもなく、答えは簡単。人をいたぶることに快感を覚えてるからだ。
すると、デバリアは軽蔑するように僕を見つめると、ポケットに手をつっこみため息をこぼした。
「……ッうがぁぁああ?!?!」
その瞬間、物凄い電流が俺の全身を巡った。悶絶するほどの痛み。前回と変わらぬこの痛み。
こんなもの一体どうやって開発したというんだ。
「はぁ、黙って言いなりになっておけばいいものを」
そう言うデバリアからは笑みがこぼれる。
悶絶する僕が可笑しくて仕方ないのだろう。
恐らくデバリアはポケットに入っている電流スイッチを操作している。
何か気に食わないことがあれば直ぐに押すつもりだろう。
「だ、だれがいいなりになんか……!」
「ノア君って、意外と馬鹿なの?」
デバリアはそう言ってスイッチを取り出す。
「ううッ、うがぁぁぁああ?!?!」
「あははははっ! 気持ち悪〜っ!」
────僕は込み上げてくる笑いを押し殺すのに必死だった。
心の底から嬉しかったのだ。やはりクズだった。
この女はクズだった。
一度目と変わらず、正真正銘のクズでいてくれてありがとう。
本当にありがとう! これで一切の躊躇なく、なんの躊躇いもなく、僕は復讐できる!
「ご飯はここに置いておくから、君の覚悟が決まるまで私は部屋でのんびりしてくるよ」
そう言ってデバリアが部屋へ行くと、そっとご飯に手をつけた。
……そのご飯に『クスリ』が入っているとも知らずに。
それから間もなくして、デバリアによるノアの支配が始まった。もちろんデバリアは加減などしない。
そんな生活が何週間も続いたのだ。しかし、いわば薬物中毒で自我のないノアが逆らえるはずなどなかった。
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