打ち上げ
「紹介します。インテリジェンスのヤマトちゃんです」
「三代目龍帝、ヤマトです。よろしくお願いします」
ヤマトちゃんの余剰分を解消したところ、冒険者というものに興味があるらしく連れて帰ってきた。
インテリジェンスは外にいるだけでとてつもない魔力を消耗するらしい。普通迷宮化して魔力を逃さないようにしてたりするから、なるほどというところでもある。……エクスはそんなこと言ってなかったけど、じゃあアイツなんなの?
「…………」
「……はぁ、ご丁寧にどうも」
『赤の夕暮』ギルドホームに帰って、待っていたゲンナイさんとガオレオンさんに報告。唖然とされてしまった。
「疲れたァー……。風呂屋行こうぜ、風呂屋!」
「まぁまぁリオンちゃん、来客の前であるからにな」
「お、お風呂……お風呂っ……!」
手を洗ってきた三人も帰ってきた。みんな大した怪我なく帰ってこれて、本当によかった。
「はしたないよ、リオン」
「げ、兄貴……」
あの大きなリオンちゃんが縮こまってしまった。……イイ。定期的にガオレオンさんの前で不覚らないかな……。
背中を丸めたリオンちゃんは、ぴゃーっと去ってしまった。
「二人も先行ってて。あと、酒場で集合ね。ボクも話が終わったらヤマトちゃんと行くから」
「あぁ。楽しみにしているぞ」
「おっふろー、おっふろー。エヘヘッ」
……。
「はい。お騒がせしました」
「リセ……あの子は『白』の子だったよな? ついに誘拐までしたか……」
「違うよ。アッシュさんと、ダンジョン攻略の『記録』全部提供するかわりに出張してもらってるの。……誘拐かぁ」
「やったら除盟だからな」
「はーい気をつけマース」
「オホン……。それで、龍帝殿。あなたはどうして発生したのですか?」
あ、ふざけててごめんなさい……。
「確認の色が強いな。まあよい。王位継承者が二人同時に健在していたからな。そのカウンターとして、ダンジョン側が生み出したのがこのヤマトだ」
「それで龍帝殿は……リセの側に着いた、と?」
「別に。ヤマトはヤマトの側に着く。当たり前だろう」
「そうですか。ならいいです」
胸を撫で下ろし、椅子に深く座り直すガオレオンさん。いらない緊張感を与えてしまったな。
「なぁ。この間からの……なんだ、王位継承ってなんなんだ。説明する約束だろう」
ボクは話した。
「…………そうか。そうだったか。リセは、……リセ・ヴァーミリオンなんだな?」
「……うん。そうだよ」
「なら、私も口を挟まんよ」
「ありがと、ゲンナイさん」
……。
「……ガオレオン殿、ほかに確認したいことはありますか?」
「そうですね。……リセ、一連の問題は解決したんですよね?」
「えぇ。原因だったヤマトちゃんの余剰魔力もなんとかなったし、ヤマトちゃんも好きで影響させてたわけじゃないし、問題はないはずです」
「ならよかった。ゲンナイ殿、ほかに気掛かりはありますか?」
「ないな。そこの龍帝ヤマトも、リセがギルドに誘ったということは
なんか、妙に信頼されてるなボク。ありがたいことだけど。
「やったね、ヤマトちゃん」
「ああ。よろしく頼む、ゲンナイ連盟長、インテリ」
◆◆◆
公衆浴場でボクはイヴちゃんに飛びかかろうとしたようで、総出で止められた。記憶がない。
バカめ。ボクには『デザイア』があるんだぞ?
『教えるわけないだろ。ばか』
◆◆◆
「なんか、景品でさ。ボクたち八位だったから、ボクの料理食べられるらしいよ」
「なんて?」
「この間の大迷宮祭、ボクたち八位だったんだよ。で、景品がボクの料理なんだって」
「リセの料理ならまぁ、景品にはなるであろうが……」
「どうなんだァ、それ」
「ねー」
ブツクサ言いながら、連盟併設の酒場に着いた。
ヤマトちゃんは、初めてのお外で疲れたらしく、寝るからあとで起こしてくれ、とのことだ。
「いやさぁ、一応コース料理ってことだったんだけど、どんなの食べたい?」
「ってもなァ。酒場貸切で打ち上げ、みたいなもんだろ? これ」
「リセ一人がキッチン、というのも据わりが悪いだろう。吾輩たちにも何か手伝うことはあるか?」
「わー、嬉しい。ギュッてしちゃお」
「構わんぞ」
やったぜ。
「気持ちは嬉しいんだけど、二人は何か得意な料理とかある?」
「盛り付けェ……とか?」
「皿くらいは運べるぞ」
「後片付けならエクスもできるよ」
「うん。頼もしい頼もしい!」
意外と手間なんだよね、乗せたり運んだりって。
「あ、あの、いいんですか? その……ここにいて……」
「もちろんだよイヴちゃん。アッシュさんにも今日一日お借りしますね(うへへ……)って言ってあるし、楽しんでってくれたら嬉しいな」
「そ、それでは……エヘッ、おこ、お言葉に……甘えて……。簡単なお手伝いなら……でッ、できます、ので……」
「うん。よろしくね」
「エヘヘ……」
天使か?
「遅れてすみません……っ。はぁ……っ、お待たせしました……!」
息を切らして、アサナちゃんが到着。なにやら
「よォ、お嬢サマ。その調子だと全力で走ってきたようだが……どうした」
「どうしたもこうしたも……! あなたたち、目を離したら私の分も食べてしまうじゃないですか!」
「すまんなアサナ嬢。自然の掟だ、摂理なのだ」
「あッ、アサナ様、ハンカチをどうぞ……」
「……ありがとうございます。……ふぅ。話は聞かせてもらいましたよ。私も厨房に立ちます」
「⁉︎」
アサナちゃん以外全員が硬直した。理由は一緒だろう。
「しっ、失礼な! これでも花嫁修行で一通りできるようにしてます! は・な・よ・め! 修行! です!」
「おー、すごいじゃん!」
「花嫁ェ……⁉︎」
「花嫁だと……」
ちょっと打ちひしがれるお嬢様たち。リオンちゃんは『金獅子姫』だし、ベルさんは一人娘で当主になる立場だったし、そういうのとは縁がなかったのかな。そういうの、羨ましがるとは意外だ。
「フフン……!」
アサナちゃんはすごい勝ち誇ってるし。
「リセェ! お前の好きな料理の作り方、教えてくれェ」
「わ、吾輩にも是非!」
「グイグイ来るな……。いいけど、未来の旦那さん受けは悪いかもだよ?」
「いいんだよ、旦那は」
「この通りである!」
頼み込みながら、ベルさんは少し体を捻り、腕で大きくS字を描く美ポーズ。価値がある。価値が。
「じゃあ、みんなで作ろっか」
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