"吠え立てろ"・"統べろ"・"輝け"
「で、ヤマトちゃん。このボク、リセ・ヴァーミリオンに何の用?」
「用はない。ヤマトが発生したのは王位継承者が二人同時に存在し続けていることに対するカウンターだし、それ以外にはない」
「そうなんだ」
平和的解決が望めそうだ。
「ヤマトちゃん。キミの魔力がほかのダンジョンにまで影響していて、ボクの友達が困ってるんだ」
「そう? それは失礼。だが、ヤマトも生まれたてで、そういうの抑えきれないのだ。手近なところでダンジョンを造り替えたのだが……まだ有り余っている。すこし苦しくもあるな」
首を鳴らしながら、ディアンドルドレスのスリットとカチューシャから炎を噴出するヤマトちゃん。……セクシーだ……。
「そこら。冒険者というのは、困ってる者の依頼を請けるのだろう? すこし……遊んではくれんか?」
熱波を伴うヤマトちゃんの魔力が、ボクたちに指向した。
「伏せるのだ、リセ!」
「いや、大丈夫」
「楽しませてくれよ、『赤の夕暮』ッ!」
どんなドラゴンブレスにも比肩を許さない、矢のような一撃。
「エクス、『アヴァロン』お願い」
『待ちくたびれたよ、マスター』
ラヴァンドラとやり合ったときに感覚は掴んだ。
インテリジェンスであるエクスには、ダンジョンの設計図となる術式が刻まれている。そのうち少しを引用して、小さい即席のダンジョン……つまり異空間を作り出すことができるのだ。
「おォ……」
「吾輩たちも負けてられんな、リオンちゃん」
溜め込んでいたものが溢れ出すような魔力の熱は、ヤマトちゃんを膜か鎧のように覆っている。それ目掛けて『ライオン』と『ベルゼブブ』が暴れる。
「これもなかなか素晴らしい……が! ヤマトを疲れさせるには程遠い! 『
「ッ……イヴちゃん!」
「はッ、はいぃぃいぃ……」
ヤマトちゃんの発動した魔術は、彼女の背に膨大な熱量を有した魔力円環を発生させるものだ。
ただそこにあるだけで、魔力によるガードが甘いと灼け死ぬような熱威。ボクらはともかく、あくまでサポーターであるイヴちゃんは、そこに立っているだけで防御姿勢を取らなければならないほどだ。イヴちゃんほどの環境対応センスがなければ、呼びかけの時点で発火していただろう。
転びそうになりながら、イヴちゃんは無事ここまで届けてくれた玉虫色の翼持ちに匿われた。
「……よかった……」
「よけろ、リセ!」
警告と共に、黒群がボクを引っ張る。間一髪、炎熱の鞭打が鼻先を掠めた。
「胸なくてよかったー!」
「リオンちゃんなら取れてたな」
「アタシはそこのバカみてェにぼーっと突っ立ってねェから平気だ」
自然、三人が寄るフォーメーションになった。
「リセ、ベル、あれやろうぜ」
「あれって?」
「あぁ、あれか。あれでなきゃヤマトの『
「だからあれってなんなの」
ヤマトちゃんの大規模術式は、少なく見積もっても彼女の言う過剰分の魔力がある。あの環がなくなればほかのダンジョンの異常は収まるだろうが、その前にこのダンジョンは愚か影響下にある全てのダンジョンが焼き尽くされるだろう。わかりやすくて大変よろしい。
「あれったらあれだろ。ラヴァンドラにやったやつ」
「あー、あれね!」
『血騰』、『デザイア』、『ライオン』に『ベルゼブブ』……を『
「言っとくけどよォ、さっきも見せた通りアタシらも強くなってる。振り落とされんなよ」
「リセが前に出る分、吾輩たちは後ろで全体を見る。いつも通り、好きにやりたまえ」
「任せた。まぁ、期待しててよ」
のちに名付けて連携術式『ヴァーチカル・ミリオン』。一点突破を目的とした、状況ごとに対応を千変百万化する、要はただのゴリ押しである。
「いい気迫だ、『赤の夕暮』! ――"轟け"『
「"吠え立てろ"、『ライオン』ッ!」
「"統べろ"、『ベルゼブブ』……!」
「"輝け"、"輝け"『
ボクとリオンちゃんの『ライオン』は、磁石のように時に引き合い時に弾き合う。磁力は足元のほか、『ベルゼブブ』にも付与されている。これによって、上下左右中央無尽の機動が可能だ。
避けきれない焔蛇は都度『
「行けェ!」
「リセぇ!」
「オッケー」
八つの頭全てを叩っ斬り、ヤマトちゃんに肉薄。
「必殺――」
「――見事!」
「パーンチ!」
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