『龍帝の庭』
開放型ダンジョン『龍帝の庭』。
現在の脱出条件は"リセ・ヴァーミリオンを含まないパーティ(=インテリジェンスが認めていないパーティ)"であること、攻略条件は不明……多分、インテリジェンスの獲得だろう……。
雷雲がひしめき、山々がいまにも噴火しそうなこのダンジョンの様子は、以前とあまり変わりないそうだ。ボクは来たことないからわかんないけど。
「は、はい。外観、生態共にほとんど変化はないよう、ですッ。開放型ですが、その分……ま、魔物の強さと生態系で補ってます……!」
「生態系ェ?」
「はッ、はい……! 牙持ち、角持ち、翼持ちの順に……序列っ、があります……」
「社会性を有している、ということであるな」
「は、はい……。牙持ちが狩りを、つッ……角持ちが子育てを、翼持ちが群れの面倒を……、ですっ」
メンバーはリオンちゃんとベルさん、(アッシュさんに頼みに頼んで)イヴちゃんにも来てもらっている。
「へェー……。リセがどォしても連れて行きたいって言うから、どんなのかと思ったら。すげェな、辞書みてェだ」
「映え……であるな」
「え、エヘヘ……映え、です……?」
馴染んでいるようで何よりだ。
「イヴちゃん。どうやったら真ん中まで行けるの?」
魔力濃度から、インテリジェンスがこのダンジョンの中央にあることは、多分素人でも感じ取れる。
しかしながら、それまでの道中いくつものグループ、数百匹のドラゴンと戦うことになるだろう。さすがに保たない。
「『龍帝の庭』は、中央に行くほどグ……グループの序列が上がります……へへ。ので、えっと、こんな感じで、お……同じ並びのグループに勝てば、効率的に進めます……っ!」
イヴちゃんが地面に描いた放射状の図。なるほど、インテリジェンスから円状に、近いほどヒエラルキーが高いのか……。
「じゃあ、あそこから襲おう」
手近なところに、鱗の綺麗なグループがいた。
「では。足止めする、リオンちゃん任せるぞ! 『血騰増殖・
ぞぶ、と尋常ではない『ベルゼブブ』が溢れ出し、数十体のドラゴン全てを覆い尽くした。
「『血騰・威震電身』ッ!」
続いて、リオンちゃんが躍り出る。
あれは……『血騰』で全身に電気をまとって、身体機能を大幅に増強したのか。しかも、全身が常に帯電していることによって、雷撃のチャージもできるようになったようだ。並み居るドラゴンたちを瞬く間にのしてしまった。
「ッし! どォだ、リセ! アタシらも、オマエに負けねェよう鍛えんたんだぞ!」
「あの日、吾輩らがこれだけ戦えていれば、リセに全部任せることもなかったのであるがな。すこしは見直したか?」
「――――」
あれ。なんだろ。目頭が熱い……?
「お……オイ、泣くことァねェだろ……」
「ご、ごめん……なんだろ。嬉しくって……」
「ハンカチ……ハンカチを使うのだリセ」
「り、リセさん……よし、よし……です……」
思い返せば、いままでほぼずっとソロだったからな。
『覇者の迷宮』をリオンちゃんと一緒に攻略して、アホなベルさんをどこか頼りにしていて。イヴちゃんはもうずっと可愛いし、アサナちゃんは大事なときいつも隣にいてくれて。
「……よし。ボクもカッコいいとこ見せちゃうぞ」
戦意を失ったドラゴンたちを掻き分け、群れのリーダーである翼持ちの前へ。
「『赤の夕暮』です。言葉……わかるかな」
翼持ちは、唸り声で応えた。
「真ん中に行きたいんだけど、いいかな。――いいかな?」
「■■■■■ーッ!」
音にならない咆哮。凄まじい空気の振動だったけど、不思議と不快感はなく、むしろ安らぎすら覚えるほどだ。
翼持ちの言葉? を受けたのか、周りのほかの群れが列をなし、かしずくようにうずくまった。
「うん。いい子いい子」
リオンちゃんとベルさんがめちゃくちゃ強いって証明してくれたからね。
……ぜんぜんカッコよくないな……。
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