依頼人
帰り道、竜車に揺られながら、大迷宮祭の景品"リセ・ヴァーミリオンによるコース料理"とやらをぼんやり考える。
『赤の夕暮』ギルドホームに着くと、青い顔をしたゲンナイさんと、深刻な面持ちのガオレオンさんが待っていた。
「間違えました」
ありったけのパワーで反転。ドアを閉める。
乗り物酔いかな? もう一軒隣だったかも。いや、間違ってないんだけどさ。
「…………」
そ〜っと、ドアをすこし明けて、中の様子を窺う。ガオレオンさんとがっつり目が合った。
「…………オジャマシマシタ」
「なにをしている、リセ・ヴァーミリオン」
ガオレオンさんに持ち上げられ、二人の対面に座らされた。リオンちゃんほどじゃないけど、ハカセのくせにいいガタイしてるからな、ガオレオンさん。観念した無抵抗のボクくらいピザ生地扱いも朝飯前だろう。
「え、なに」
絶対ロクなことじゃないだろ。
向こう側にアサナちゃんもいたらマジで行方晦ましてたな。
「……」
「……」
二人は鎮痛な面持ちのままだ。
「なんもないなら帰るけど」
「もう帰ってるだろ、リセ」
「ボクの家はおじさんとおっさんがお葬式みたいなツラ並べてないんだよ」
「おっさん……?」
「ヅラではない。潔いだろ、おれは」
「言ってないだろヅラとはよ」
「おっさん……?」
あとで聞いたけど、ガオレオンとボクは同い年らしい。
「ホントなにしに来たの」
「……」
「……では、僕から」
お鉢の回し合いは決着したようだ。
「ダンジョン『龍帝の庭』にインテリジェンスが発生した。その影響で、エントランスを介しほかのダンジョンにも魔力の異常が起きている」
「異常?」
「主な報告は魔物の強化だな」
「インテリジェンスが発生、っていうのは? 元からあったのが見つかったんじゃないの?」
「敗走した『緑』の冒険者が、そう言伝を任されたらしい」
なんかデカイ話になってない……?
「待って待って待って。それで、ボクに何の用なの……?」
「そのインテリジェンスが、お前をご指名なんだよ。リセ」
ゲンナイさんの口から、一番聞きたくないことを告げられた。
「『龍帝の庭』だけならともかく、ほかのダンジョンにまで影響が出ては敵わん。これは連盟として直接、『赤の夕暮』への依頼だ。解決してくれるか」
「いいけど」
「そうだよな。急にこんな話をしてすまん。だが、すこし考えて見てくれないか? ……また来るよ」
「いいよ。やるって言ってんじゃん」
「えっ?」
「自分で頼みに来たんだろなんだよその意外そうな顔」
「しかし、相手はインテリジェンスの……」
「その話のためだけにガオレオンさんが来るわけないよね。なんです?」
「あぁ。インテリジェンス発生の原因は、シン=スカーレット王家の血統術式が同世代に二つ確立したことに起因する――と僕は踏んでいる」
「王家……術式? なにを言っているんだ……?」
「あとで話すから待っててゲンナイさん」
そういえば
「先日まで崩御寸前だったラヴァンドラ陛下が持ち直した。その時点で君の『デザイア』は自然消滅するはずだったんだろうが、君は見事ラヴァンドラ陛下と同等以上に血統術式を成長させたからね。それほどの術式が二つもあれば、どこかでバランスも崩れるだろう」
そういうもんなのか。
「大事っぽいのはわかったよ。行こう。リオンちゃんとベルさんは酒場にいるんだもんね?」
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