リセ 王

「昨日ぶりですね、ラヴァンドラ陛下」

「『貴方も王位にある。ラヴァンドラで構わん』」

「そう? じゃあ失礼するね」

 二人きりの謁見の間は、いやに声が響く。


「『……話したいことは特にないのだがね』」

「ボクもまぁ、そんなに……かな」

「『……。ありがとう、リセ』」

「……なに、急に」

「『独り言だ』」

「なんなんだよ」


 …………。


「王位継承権のこと、なんだけどさ」

「『話してみろ』」

「どうしてもならなきゃダメかな、って」


「『…………』」

 ラヴァンドラは沈黙で促した。


「ボクはほら、普通にその辺の冒険者生まれ冒険者育ちだし。一昨日……こっちだと二週間経ってるのか……言ったように、向こう側のその先にも行きたい。だから、さ」

「『そんなことか』」

「そんなことって言い方はないだろ」

「『気にするな。私もすこしはしゃいだおかげで、だいぶ持ち直した。あと数年は在位できるだろう』」


 すこし……すこしってなんだ。おおはしゃぎだっただろ。


「『そのころには、リセにも相応の格が身についているだろうさ』」

「どうかなぁ……」

 全然自信がない。

 今日だって公的な挨拶はアサナちゃんに任せっきりだし。


「『私の息子たちが、アサナが、リセを認めている。七大貴族にもそのような向きがあるとも耳にしている……。それでも自信がないと言うのか?』」

「そういう見方もある、のか……」


「『資質の話だ。あとで身につくものは身につければよい。頼れる者に頼れるならそうしろ。そうしてリセは、その日が来たら笑っているだけで王なのだ』」

「それはどうかと思うけど……うん。ちょっと、前向きに考えてみるね」


「『……話し過ぎたな。改めて礼を言う、私の『絶望』を共に見て、それでも進もうとした冒険者リセ』」

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