謁見→←謁見

「ほかのギルドのメンバーにセクハラはよくないぞ、リセ」

「ハゲ」

 ゲンナイさんが階段から降りてきた。

「大迷宮祭の結果発表、欠席しただろう。合わせて色々話がある。上に来い」


◆◆◆


 だだっ広い会議室に、アサナちゃんとボクとゲンナイさん。


「なに、話って」

 呼び出されるのって、怒られるんじゃないかって感じでヤなんだよな。


「大迷宮祭の結果だが、八位だった。おめでとう」

 と、賞状を手渡された。

「八位か……」

 優勝狙いだったけど、結果は結果だ。受け止めるほかない。


「で、景品なのだが…………」

 バツの悪そうに手渡された封筒を開くと、

「"『赤の夕暮』リセ・ヴァーミリオンのコース料理"……いるかこんなもんッ!」

「だよなぁ」

 ゲンナイに投げ返すと、見事頭に貼りついた。アサナちゃんがこらえている。


「だよなぁ、じゃないんだが? え、なに? ボク勝手に景品にされてたの?」

「だ、ダツ料理のときにな……。ほかのギルドマスターらと話し合って、上位八ギルドには、各ギルドマスターから特典が与えられることになってだな……」

「マジで勝手だな!」

 ちなみに招待状の日付は五日後になっている。


「え。なんでそれボク呼んで話に加えなかったの?」

「どうせやるだろ、リセは」

「…………まぁ」

 まぁ、じゃないが。

「用は終わり?」

「いや、本題はこっちだ」


 別の書類。

「特別勲功……?」

「そうだ。できるだけ早く王宮に出頭せよ、とのお達しだ」


◆◆◆


「また会ったな、相棒」

「ギャス……」

 あの気が合うドタドラゴンに連れられて、王宮に来た。


「「「お待ちしておりました、リセ様、アサナ様」」」

 長い廊下にズラリ並ぶメイドさんに迎えられ、謁見の間へ。


「お招きいただきありがとうございます。リセ・ヴァーミリオン、アサナ・マゼンタスカイ、参上致しました」

「ど、どうも〜……」

 立ち並ぶ王子様三人と、玉座に座り込んだ見知らぬ老爺。そのうち三人は、ボクらを見るなり膝をついた。

「えっ、なんですか一体」

 ヴァルハラさまは以前もそうだったけど。


「リセ・ヴァーミリオン。今回の騎士団並びに我ら兄弟、さらには父ラヴァンドラのダンジョンからの救出――感謝する」

 俺様王子シャンバラさま。あのときはガワだけ似せたラヴァンドラ陛下がダンジョンに来てたけど、本人は多分連盟事務所にいたのだろう。


「やったな、リセ」

 今日もエルドラドさまの胸板が眩しい。褒賞とかあったら、ぜひちょっと触る権利に使いたい。


「……フッ」

 お前は何なんだよ針金細工! 前髪ばっかり触りやがって! ……そういえば。

「お前、アサナちゃんに謝ったんだろうな!」

「――先日は殺そうとしてすまなかった、アサナ」

「いえいえ。あのとき殺さないでくれて、ありがとうございました」


「え。これマジ?」

「マジだ、リセ」

 ほとほと呆れたようなエルドラドさま。

「これでよろしいですか、リセ」

「前髪いじるのやめなよ」

「エルドラドの胸板はセーフなのでしょうか?」

「あれは……いいんだよ。目の保養だよ」

「⁉︎」

 エルドラドさまが胸のボタンを締めた。いまにもはち切れそうである。

「これはこれで……」

「助けてくれ、兄さん!」

「俺様もたまに見ていたぞ。鍛えていて感心だな、と」

「そんな……!」

 感嘆とともに、限界を迎えたボタンが弾け飛んだ。あまりの芸術性に、その場にいた全員が拍手を送る。

「……失礼!」

 女の子みたいに胸を隠して、奥に行ってしまった。


「『そろそろ、話してもいいか』」

 念話を伴った、老人の声。ラヴァンドラ陛下だ。

「『魔術での発話、失礼するよ、リセ・ヴァーミリオン。もう喋るのもままならんのだ』」

「じゃあ寝てろよ、クソ親父」

「アサナちゃん⁉︎」

 どんだけお父さんのこと嫌いなんだ、この子。


「アサナ……親子とはいえ不敬であるぞ。訂正しなさい」

「失礼しましたクソ兄貴」

「無敵じゃん」


「そもそも、私はあんたらがお母さんにしたこと忘れてませんからね!」

「…………」

「…………」

 推し黙るシャンバラさまとヴァルハラさま。なにやったんだアンタら。


「『…………リセと二人で話をさせてくれないか』」

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