『うずしおの回廊』攻略

依頼・ウェイトレス・魚料理

「失礼します。よろしくお願いできますでしょうか……」


 依頼!

 依頼が来た!


「はい、喜んで!」


 からんからんとドアを開けてくれた依頼人さん。少し引き気味だ。


「あの……まだ内容をお話してないのですけど……」


「あ、そっかそっか。テキトーにおかけください。エクス、お茶おねがーい」


 向かい合って着席。

 同じくらいに、お盆に紅茶とお茶請けのクッキーを乗せて、エクスが来た。


「依頼人ですか、マスター」

「うん!」

「奇特な人だね……いたっ」

 失礼なことを言ったのでチョップ。


「……可愛らしい受付くんですね」

 婦人は苦笑で済ませてくれた。


「女の子です、一応。それでそれで、どのようなご用件で?」

「はい。わたしはニライと申しまして、王都でレストランを経営しているのですが……」

 王都からのお客さん。珍しいな……。エクスじゃないけど、奇特なことだ。


「市場で、食卓に理解のある冒険者がいると噂になっていました。何も考えていないような琥珀の瞳、何の悩みもないようなピンク髪、何の苦労もないようなちんちくりん! 噂通りの方でよかったです……」

「完全に悪口じゃん」

「え? あっ、あらあら! すみません……市場でそう聞いていたので……」

「いや、怒っているわけでは……」


 確かに、ボクの人相描きを頼むなら、ボクでもそう言うよ。アホっぽい見た目は自覚しているからね。……面と向かって言われるとヘコむけど。


「そうですか? えと、それで、依頼なんですけど……」


 ニライさんが胸元から出した紙は、企画書のようだった。


「魚系の魔物の料理……?」

「はい。できればレシピまでお願いできないでしょうか……」

「それはいいけど……」


 魚……というか、水棲系の魔物。

 ダンジョンは基本的に地上のものだし、そういった魔物が出現するところがまず限られてくる。

 冒険者もまぁ、当然地上のもの。水中で活動できる方法とかもなくはないけど、というくらいだ。


「難しいでしょうか……」


 そりゃあ、まぁ。


 しかし、ニライさんは困っている。市場でボクの評判を聞いて、王都からはるばる来てくれたのだ。伝聞はかなり失礼だったけど。


「わかりました。やるよ、この依頼」

「ホントですか⁉︎」

「一週間くらいで報告できると思いますので……」

 言いつつ、ぼんやりどうするか考える。


 どのダンジョンか。どう水を制するか。どんな魔物を狙うか。どう料理するか。などなど。


「ありがとうございます! それで、報酬なんですが……」


 二枚目の紙。契約書のようなものだ。


「……えぇ⁉︎」

 びっくりした。


「いいんですかコレで⁉︎」

「えっ、はい! リセさんの希望次第では三割までは検討する、と預かっております」


 仕入れ費全額と、新メニューの売上の一割!

 殺されるのか、ボクは!


「いいい、一割で十分です……!」

「そうですか。……では、よろしくお願いします」



◆◆◆



「……なんだけど」

「水辺かァ……」

「吾輩はパスである」

 そんなわけで、ギルドメンバー(メンバー!)のリオンちゃんベルさんに共有したところ。


「こないだのオークみたいな、部位破壊が必要なんだろ? 『ライオン』じゃやりすぎちまうからなァ」

 二人の返事はあまり明るくなかった。


「だよねぇ」

 ボクもまぁ、ダメ元の打診だったのでどうということはない。


「仕事といえば、酒場の方で臨時のウェイトレスさんの募集あったよ。朝来てくれれば日雇いで働けるって」

「それって目立つのか?」

 ベルさんが変な食いつき方をしてきた。


「目立つ……んじゃないかな。多分酒場で一番目立つんじゃない?」

 さすがにパーズさん率いる『黄の花畑』が団体で食べに来てたら負けちゃうだろうけど、ベルさんやリオンちゃんも相当の美少女だし、案外いい勝負するかもな。


「よし。吾輩はやるぞ! ウェイトレス、だな?」

「…………じゃあ、アタシもベルに着いてくよ。アホ一人だとなにすっかわかんねェからなァ」

「アホ?」


「お願いするね、リオンちゃん」

「え?」


「これ、紹介状。ほかの冒険者と話すのもいい刺激になるだろうし、楽しんできてね」

「おう」


「吾輩さ、いまアホって呼ばれてさ、リセそれスルーしたよね?」

「じゃあボク、準備あるからー」

「ねぇ? 吾輩年上だけど? 最年長なんだけど? ねぇ、ねえってば!」

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