並行世界編

世界線一 花は咲き、愛する人は隣に

第一ノ一 絶望の終わりは、絶望の始まり。(※残酷、不快な表現あり)

 ザッ、ザザッ。



 ガガッ、ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。






ハ、ワレワレニ“イカサレテイル”】







 ⁂⁂⁂⁂




「…………」



 少女は仰向けで、畳の上で横たわっていた。

 黒い瞳からは、生気は感じられない。

 今日も淡々と、事務的に“行為”を済ましたからだ。


 幼い頃、両親を病気で亡くした少女は、親戚をたらい回しにされた。親戚の男共は、肉親がいない事をいいことに、彼女を性の捌け口としていた。


 幸い、挿入は必死の抵抗で防いだが、その分、少女は乱暴に扱われた。


 だから、彼女は気持ちを伝える事を、叫ぶ事を諦めた。


 叫ぶ事は諦めていたが、彼女には、蛍の光のように優しく、太陽のように熱い、希望があった。

 愛する人がいた。

 生きていれば、彼に会える。

 それだけが、彼女の生きる理由だった。



 そんな、無の絶望を過ごしている時、は、落ちてきた。 


 “あれ”は遠目でもわかるほど、大きな物だった。


 巨大な何かが、町の中央に落下した。

 隕石が落とされたかのような衝撃音が響き、大きなこうができた。


さき、様子を見てきなさい」


 和室の奥で座っていた着物を着た老女が、少女に強い口調で言った。


「…………」


 名前を呼ばれたボブショートな黒髪の少女、深夜ふかやさきは、立ち上がると乱れたセーラー服を直し、親戚の家を出た。




 咲が町の中央に辿り着くのは早かった。

 巨大な何かが落とされた衝撃で、半径五十キロ内の建物が壊されたからだ。

 破壊された建物の破片を踏みながら進むと。


「……種?」


 町の中央にあったのは、大きな種だった。

 白に近い薄黄茶色の種。


「きれい……」


 滑らかな皮の種。それは人々に興味を抱かせた。咲も同じく、巨大できれいな種から目が離せなかった。


「何だ何だ!?」


「種!?」


 衝撃から免れた人々が集まってきた。すると。


「え……?」


 種は急に芽吹き成長し、空まで届きそうなほど伸びると。


「うわぁ……」


 大きな花を咲かせた。黒い浜茄子ハマナスを。


「不気味だけど、きれいねー」


「でも、こいつのせいで町はぶっ壊れたんだ。こんな花、早く切あ」


 野次馬の男は最後まで言葉を紡げながった。黒浜茄子から伸びてきたつるが、男の顔面を貫いたのだ。


「ひっ……」


「キャー!」


 野次馬たちはおののき。


「——……」


 咲は恐怖で声が出なかった。


 顔を貫かれた男は、そのまま黒浜茄子に飲み込まれ。バキッゴキッぐちゃぐちゃと、悍ましい音と共に、喰われた。


「ギィヤー!」


 野次馬たちは一斉に逃げ出したが。


「ギャッ! ごふっ!」


 黒浜茄子から伸びてきた蔓で、両足を切断され、逃げる術を失い、すぐに顔や腹を貫かれた。

 そして、黒浜茄子の食糧となった。





 咲以外の野次馬たちは全て捕食された。

 そして、ついに、咲にも鮮やかな程の緑色をした蔓が伸びてきた。

 咲は目を開いたまま、死を覚悟し、蔓を見つめていた。

 咲にとって、“死”とは、あの“行為”よりも、恐ろい事ではないのかもしれない。そんな覚悟の色を宿した瞳だった。



 咲の顔に蔓が届く瞬間、


「咲!」


 咲が一番聞きたかった声がした。


 愛する人の声が。


 咲が振り向くのと同時に、彼女はある男に抱き締められ地面に転がった。




 — — — —



 あとがき。


 まず、正愛まさちかが生きている、でも、親戚共は相変わらずくず(笑)な世界線です。


 うーん、なんか、最初から「ぽぽ」言わないと、面倒くさいですねー(おい)


 そして、並行世界なので、全く違う内容にしようかと思いましたが、並行なんだから、いんじゃね? 本編と同じ部分を少し、いや、結構? 入れました。


 決して手抜きではありません、決して手抜きではありません(大事な事なので二回言いました(笑))


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