lastday.「いつか、必ず」「信じて、待ってる」(※少し不快な描写あり)
その日は、年に一回ある、親睦会という名の親戚一同の二泊三日の旅行だった。
旅先の開放感ある、魅力的な宿での行い。
これがしたかった男共は、
腹が立った男共は諦めたが、その分、咲を殴った。
大人たちがいなくなった夜の縁側。
咲はちょこんと座り庭の方に足を投げ出し、麦茶と氷が入ったコップで殴られた頬を冷やしていた。
「相変わらず
「まさちかおにいちゃん……」
サークルの打ち合わせで遅れてやって来た
「大丈夫か? 痛かったろ?」
咲の赤く腫れた頬にそっと手を伸ばした。
「うん、でも大丈夫。毎日の痛さにくらべれば」
「あーあ、あいつらが泊まった旅館、崩れちまえばいいのに。な?」
「でも、そうしたら。りょかんの人とか、関係ない人まで死んじゃうよ……」
「咲は優しいなー。俺は優しくねぇからな、周りなんか知ったこっちゃねぇ。お前が痛い思いを、苦しい思いをしなきゃ、それでいい」
「……まさちかおにいちゃんは、じゅうぶん優しいよ。誰よりも」
「じゃあ、優しい
「……すぐそうやって調子にのる」
「はいっ、すいませーん!」
「まぁ、ぶっちゃけ。本当にどうでもいいんだ。あの屑連中がどうなろうが、サークル仲間にロリコンだと思われようが、どうでも。お前が幸せなら」
「ロリコン……。おさない子や女の子を好きな人……」
「お? 早速この間の図書館の知識だな? すごいすごい」
「おにいちゃんすぐ子供扱いする……。はやく大人になりたい……」
咲は口を尖らせ落ち込んだ。
「ははっ、そうやってすぐ口をむいっとさせる内はまだまだ子供だ。でも、充分」
「今でも可愛いけどな」
「——……」
「そうやってすぐ苺みたいに真っ赤になるとこもな。あ、だから苺味が好きなのか」
「それは関係ない……」
「ははっ。まぁ、でも。いつか必ず、ここから連れ出してやるからな」
「……うん」
「俺を信じて、待っていてくれ」
「……うん。信じてる、待ってる」
「中、高、大と全国大会連覇してんだ。絶対どっかのチームに目が止まるはずだ。そうしたら、こんな腐った町、そして、この屑の家から出て、俺と暮らそう」
「うん」
咲は両手でコップを持ち、一口こくんと飲んだ。
「俺にもちょーだい」
「はい」
咲は見上げながら、両手でコップを持ち上げ。
「どーも」
「ふっふっふー」
そして、ニヤニヤと笑った。
「何?」
「これで、間接ちゅーだな」
「——」
咲は一瞬で真っ赤になった。
「また苺咲ちゃんになっちまったなー」
「——おにいちゃん、やっぱり子供っぽい」
「いいじゃんか、腐った大人ん中、子供っぽい俺がいても」
「——うん。子供っぽくても、どんなおにいちゃんでもかっこいい」
咲は、耳や首まで真っ赤になりながら、俯くと小さく言った。
「んー? んー、小さくて聞こえなかったなー。もう一回、大きな声でー」
「——ぜったい聞こえてた。だからもう言わない」
咲は口を尖らせ、
「ははっ、からかいすぎたか。でも、まぁ、そうやってお前が、どんな俺でもかっこいいって言ってくれっから、頑張れるんだけどな」
「やっぱり聞こえてたんじゃん……」
「はっはっはー、バレたかー。……でも、俺もどんなお前でも可愛いよ。だからって、泣かせてまで襲う奴らの気だけは、これっぽっちもわからんし、わかりたくもねぇけどな」
「うん……」
咲はうとうとし始め、時々頭がかくんと下がった。そして、頭を上げると、目を瞑り眠気を吹き飛ばすように首を横に振った。
「このまま寝ていいぞ。今日は俺、ここにずっといるから」
「まだ、だいじょう、ぶ……」
「いいから寝ろって。最近ちゃんと寝れてねぇだろ。夜にいつ奴らが来るかわからねぇから。だから、な?」
「な?」と、
「——……」
「待ってろ、咲」
番外編 完
⌘ ⌘ ⌘
あとがき。
ほのイチャ編、終わりです。
この後、
そして、あの惨劇です(苦笑)
次は、並行世界編です。
色んな世界線を書きたいなと、思っております。
ではでは、ほのイチャ編にお付き合いくださり、ありがとうございましたー。
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