第23花 玩具と屑(不快・残酷描写あり)

 その後、泣き疲れたのと、ここから出られる嬉しさで胸いっぱいになったのか、さき正愛まさちかに寄りかかり眠ってしまった。


 正愛まさちかは咲を起こさないようにそっとかかえると、一番奥の部屋に連れて行った。


 そこは、咲の部屋で湿っていて、ほこりやすすで薄汚れている部屋だった。

 咲を人間と思っていない親戚共は、部屋の掃除も許さなかった。


 正愛まさちかは、綿が入っているかも怪しい薄い布団を押し入れから出すと、畳の上に敷き、そこに咲を寝かせた。そして、同じような薄い掛け布団をかけた。


 そして、しゃがむと咲の髪をそっとき、部屋を出た。


 その時だった。


「なっ!」


 親族会議でいるはずのない男共が戻ってきていて、六人がかりで正愛まさちかを押さえつけた。


「お前、がっ!」


 正愛まさちかは顔を床に押し当てられた。


「みィーてェーたァーぞォー!」


 この家の主人の弟が、震える手でスマートフォンの動画を流した。そこには咲と正愛まさちかのやり取りの一部始終が映っていた。


 正愛まさちかは鼻から血が出る中、考えた。


 何故、この男は知っている、と。

 親族会議で出払っていたはずだ、と。


 答えは簡単だった。


 この男は無職で姉のすねをかじって生きていた。

 この日も朝から飲んだくれ、熟睡していた。それに呆れ、親族たちはこの男だけ置いていった。


 男が目覚めたのは夜。

 自分が置いていかれた事に気づき、苛立ち、未成年だから残っている咲を腹いせに犯そうとし、目にしたのは、仲睦まじい二人だった。


 それに憤怒ふんどした男は、自分のスマートフォンで録画し、添付し親族たちに一斉送信した。


 こうして、けだものたちが戻ってきてしまった。


はオレたちの玩具おもちゃだぁ!」


 男は涎を飛ばし、目を血走らせながら、スマートフォンを叩きつけた。


 それを見た正愛まさちかは、のように、何かが弾けた。


「——くずがあぁぁぁ!」


 そう厭悪えんおの眼差しで睨むと、男たちを振り解こうとした。だが、いくら体格が良く、体を鍛えている正愛まさちかでも、大の男が六人がかりではびくともしなかった。


「がっ!」


 腹部を殴られ、後ろ手に手足を縄で縛られ、口をガムテープで塞がれ、床に転がされた。


 そして、けだものたちは手にしていたシャベルで庭の土を掘り始めた。


 それを見て、正愛まさちかは一瞬で悟った。



















 生き埋めにされると。


 

 正愛まさちかはもがいた。


 だが手足を縛られた今、できるのは、それこそ玩具おもちゃのように廊下の床を転がるだけ。


 庭の土は、成人男性が容易に入られる大きさまで掘られていく。



 満月が照らす薄暗い夜に、ザッザッと、土を掘る音が響いていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る