第19花 呼び声

 絶望の波は、着実に大量に近づいてくる。


「だけど、どうしよう……」


「ぽ?」


「あんな大量な花、交わしながら戦うのは無理だ……」


 どんなに鋭く生きているかのように動くつるさきを襲っても、花本体は動かなかった。だから、蔓を交わせば何とかなっていた。

 だが、花自体が動き、そして、そこからしなる蔓を交わしながら、シトの髪で大元の根を切断する。のは、限界がある。


「ぽ」


 シトは髪を一本抜くと、咲に手渡した。


「髪?」


 咲が受け取ると、髪は竹刀ぐらいの太さと長さになり、刀のように固くなった。

 咲は試しに建物の残骸だった柱を切ってみた。柱は真っ二つに割れ、破片はガラガラと崩れ落ちた。


「ありがとう。これで、戦える」


「ぽ」


 蔓をまとい、涎のような水滴を飛ばし、発狂しながら近づいてくる波。

 皮膚を残し人間だった面影があるもの。顔や体が完全にくろ浜茄子ハマナス化しているもの。

 様々な形の絶望に、二人は。


「シト、行くよ!」


「ぽ!」


 立ち向かった。


 それぞれの身長を活かし、咲は小さな花を、シトは大きな花を切断していく。

 二人は蔓を交わし、時には頬や腕などを切られ、満身創痍まんしんそういだ。

 けれど、止まらない、ただ前を向く。“生きる”という意志を胸に。


 だが、咲は目前もくぜんの花に夢中で忘れいた。


 花の本体は、地中深くにいる根だということを。


 その根が、地面から顔を出し、咲の両足を絡め取った。


「しまっ……」


 そして、根に気がいった隙に、蔓で唯一の武器だったシトの髪を弾き飛ばされた。


 固定された両足、手から離れた武器、迫る絶望の波。




 “死”


 


 咲は“それ”を覚悟した。



 その時。




















「咲!」



 背後から聞こえた声。


 それは、


 不思議で不気味で、どこか優しい、人間のようで人間ではない低い声ではなく。


 人間の、の声。



「……お従兄にいちゃん?」



— — — —



 あとがき。


 お兄ちゃん、お義兄にいちゃん。色んな“おにいちゃん”を考え(笑) 辿り着いたお兄ちゃんが、従兄妹でした。


 私の性癖です。従兄妹は法律上は結婚できるけど、なんかどこか、背徳感がある気がしてテンション上がる(笑)


 そんな、変態作者の作品へようこそ(笑)

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