第18花 黒の波
「でも、これでわかったね」
「ぽ?」
「この町に生存者はいない。人間を見かけたら、
「ぽぽ」
「やっぱり中心の花を、消さないと」
二人は町の中央でうごめく黒浜茄子を見据えた。
二つ目の太陽が消滅した事により、成長は止まっている。だが、撒き散らしている花粉や花びらにより、最初より花の数は確実に増えている。
「何とか、少しでも、安全に、近づければ、な……」
咲はシトの大きな体に寄りかかった。
「ぽぽ?」
「ごめん、疲れ、ちゃった。少し、眠らせて……」
「ぽ」
シトは咲をそっと
「ぽ、ぽ」
「シトの声って、子守唄、みたい、だ、ね……」
シトの声と撫でられる手に安心したのか、咲はすぐに眠りについた。
「ぽ、ぽぽ」
それを見てシトは微笑み、目を瞑った。
翌朝。
「ぽぽ! ぽぽ!」
シトの焦ったような声で咲は目を覚ました。
「どうしたの、シト」
目を擦りながら咲が体を起こすと。
「ぽ!」
シトは町の中央を指した。
黒浜茄子の向こうから、するはずのない大勢の人間の
「え、あんなにまだ人間がいたの?」
「ぽ、ぽぽ!」
シトは大きく首を横に振ると、しゃがみ咲を肩に乗せた。
咲が、肩車をされ、見えた先には。
「な、んで……」
絶望の波が来ていた。
隣町の人間が、こちらに逃げてきていた。この町の惨状を知らない人々が。
黒浜茄子があることを知らずに逃げてきた人々は。
「があ゛っ!」
刹那に蔓で体を貫かれるか、舞い散る花粉や花びらに触れ、黒浜茄子となった。
こうして、必然的に、逃げてきた人間の分だけ、黒浜茄子は増えてしまった。
元々、侵食されていた人間もいて、新たな形態の動く人型のような花も増えた。
絶望の、黒い波が、やってきたのだ。
「…………」
二人は言葉を失ったが。
「……生きるんだ」
咲は力強く前を見据えた。巨大な花の向こうからやってくる、絶望の波を。
「生きるんだ、絶対に、二人で」
— — — —
あとがき。
書いといてあれですが、隣町の人間、こっち来んなや(笑)
動き移動する花も増え、気持ち悪いことこの上ない。……何で、こんなお話を書いているんだろう(笑)
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