第17花 死んでなんかやらない

「わたたたたたたたたたたたたたたたたたたしよりそそそそそそそそそそそそそそそそそそそのばけものをえらえらえらえらえらえらえららららららららららららららららららぶのぉー!」


 かつての同級生は、目鼻口から血を流したまま、つるを伸ばしてくる。


「確かにシトは人間じゃない! だけど、化け物でもないよ! 化け物なのは!」


 さきはまた跳び上がり、蔓を避けながら叫ぶ。


「あなたの方だよ!」


「ぽ!」


 シトは髪を伸ばし、蔓を切断した。


「シト! 足!」


 落下しながら、咲は同級生だった少女の足を指した。靴を履いてない代わりに、鮮やかな緑の刺々しい蔓が、彼女の足をまとっていた。


「ぽ!」


 シトは髪を伸ばし、少女の足首を切断した。


「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


 少女だったものは顔を覆い崩れていく。


「いついついついついついついついついついついついついついついついつかかかかかかか

かかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかこうかいする! そそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそのばけものをえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらえらんだことをー!」


 そう絶叫しながら、ろうが溶けるように、目鼻口から、それぞれの部位の眼球や歯などがついた蔓を伸ばし、崩れ落ちた。


「後悔、なんか、しないよ」


 崩れ落ちたかつての同級生の横に着地した咲は、彼女を見下ろした。


「だって、あなたはんだから」


「ぽ?」


 咲の隣にやってきたシトは、不思議そうに首を傾げた。


「ああ、うん。この子ね、んだよ」


「ぽー?」


 シトはさらに首を傾げた。


「ああごめん。わかりやすく言うね。思い出したんだけどさ、少ししか行かなかった高校のクラスメイト。確かに彼女はいたの、でも、いないんだ白塚しらつかさんは」


「ぽー?」


 シトはさらに深く傾げた。


「ごめんごめん。えっとね、白塚さんの姿形をした同級生。確かにうっすら思い出した。でも、彼女は、彼女の名前は“黒塚くろづか”さんだった」


「ぽ……」


「だから、いたけどいない。この子は黒塚さんの形をした化け物だったんだよ」


「ぽ」


 少し納得したように、シトは小さく頷いた。


くろ浜茄子ハマナス、だから、白塚さんにしたのか。神様がいるんだとしたら、私を馬鹿にしているのかな。登校拒否した私に、気づくはずがないだろう、って」


「ぽ……」


「ふふっ」


「ぽ?」


「あ、ごめんね。もし、神様がいて、挑戦的にあの花や、さっきの子を寄越したのだとしたら。乗り越えるのが無理だろうと思われているのだとしたら。私、そういう方が燃えちゃうタイプなんだ」


「ぽ……」


 くすくすと笑う咲に、シトは少し驚いた。


「確かに、一人だったら、かなり前に私は捕食されているか、あの黒浜茄子になっていた。でも、一人じゃなかった」


「ぽぽ」


 「自分がいる」と言うように、シトは力強く頷いた。


「二人なら、どんな事でも乗り越えられる。負けてなんか、死んでなんかやらない」



 — — — —



 あとがき。

 

 黒だから白、安直すぎましたね(苦笑)


 次回、一難去ってまた一難。次の絶望です(笑)


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