第13花 蝕む手(※不快な描写あり)

「じゃあ、まずは梯子に乗せてくれる?」


「ぽ」


 シトはそっとさきの脇腹を掴むと持ち上げ、はしご車の梯子のバスケットに下ろした。


「じゃあ、梯子を動かして」


「ぽぽ」


 シトは髪を伸ばし、はしご車の基部にある操作席のレバーを動かした。ゆっくりと梯子が伸び、咲が乗っているバスケットがの太陽に近づいていく。


(暑いな……)


 少し近づいただけで、咲の額からは汗が流れ、眩しさに目が眩みそうになった。だが、このぐらいでは彼女は動じない。


 では。


 咲は、もう少しでくろ浜茄子ハナマスと太陽の間に届くというところで。


「はぁっ!」


 わざと大きな声を出して跳び上った。

 咲の声に反応した黒浜茄子と太陽が、彼女の方を向いた。


 黒浜茄子からは鋭く刺々しいつるが伸びてきた。だが、咲はすんでの所で交わした。

 咲は、よく憶えていないが、のおかげで反射神経は良く、体も柔らかった。


 だから、太陽の中心から伸びてきた、人間のような手も、交わせる。


 


「うっ……」


 太陽から伸びてきた無数の手を見て、咲は一瞬だが怯んでしまった。


 その手は、何日も自分の体を押さえ込み、まさぐってきた、親戚の男たちの手だった。

 脂っこく、毛深く、骨張った太い手。


 それを見て、咲は反応が遅れてしまい。


「あ゛あ゛ぁ゛っ……!」


 腕を掴まれ引き込まれ、高温の太陽に焼かれた。咲の白い腕が一気に赤くなる。


「ぽ、さぽ!」


 放水準備をしていたシトは、咲の鈍い声を聞き、消防車に向けていた髪の一束を、太陽に向けようとした。


「私はいいから!」


「ぽ……」


 咲は顔を歪めながら、掴まれなかった左手で手を引き剥がしつつ叫ぶ。


「放水!」


「ぽ、ぽぽ……」


 シトは少し狼狽うろたえたが、すぐに髪を消防車に戻した。

 髪でホースを吸水口に装着し、バルブを開き、 APモニターの作動ボタンを押した。真空ポンプが作動し、揚水し終わると、吐水口バルブを開き、ダイヤルを全開にした。


 これを髪で一気に五台操作し一点に集め、太陽の真上から。


「ぽ!」


 複雑な怒りを込め、ウォータージェットで切断するように下ろした。

 すると、ぶつけられた太陽は。


「ぐあ゛あ゛っ!」


 人間の男のような声を出しながら、真っ二つに切られていく。


「やった……」


 切られていくことで、咲を掴んでいた手の力は弱まった。咲は太陽の手を蹴り上げ離す。


「さ、き、いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」


 手から、男の声が響き、咲を呼ぶ。


「私はっ! もうっ、されるがままのっ、あの時の私じゃない! 今は! 一人じゃない!」


「ぽぽぽ!」


 咲の力強い声は、シトの力になり、彼の放水する髪に力が込められた。そして、二人は、不可能だと思われた太陽を消すということを。


「な゛ぜええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」


 下ろすことで、真っ二つにし、成し遂げた。



 — — — —



 あとがき。


 クラ◯が立った的に、シトが喋った! な回でした(笑)

 咲は負傷したけど、何とか倒せました。


 まだまだ困難は続くので、よければ二人に応援のフォローなどをポチしてくださると、励みになりますー。

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