第12花 近づくということ

「とういうわけでね、消防署を探そう。もう壊されたかもしれないけど、消防車が残っていたら、それをシトが操作して、一斉放水するの。ってシト、車は運転できる?」


「ぽ」


 シトはしっかりと頷いた。


「よかった。何台かあるといいよね。シトは人じゃないから、きっと消防車の放水力の限界を超えて、光速でやれると思うんだ」


「ぽぽ」


 シトは「頑張る」と言ったように、ガッツポーズをした。


「うん、頑張ろう」


 それを見てさきは少し微笑んだ。






 こうして二人は、消防署をいくつか周った。

 やはり中には、署も車もくろ浜茄子ハマナス化されていた所があり、その都度しなって襲い掛かってくるつるや花粉を避け、体力気力を消費しつつも、何とか五台、消防車を確保できた。


 ドアに鍵はかかっておらず、シトはそれらを窓を全開にし、伸ばした髪でハンドルを回した。幸運な事に、どれも鍵は付いたままだったので、エンジンはすぐにかけられた。

 恐らく、消防車の放水であの化物花に対抗しようとしていたのだろう。


 こうして、周りの黒浜茄子の猛攻を、シトの髪で切断しつつ、町の中央まで二人はやってきた。

 の太陽は、シトの背、八尺ぐらいまで下りてきていた。

 ここまで下りてきて、はっきりと形がわかる太陽は、おぞましいほど美しくきれいな球体で、鮮やかな橙色だ。


「よし。いい? シト。私が囮になるから、引き付けている間に放水してね」


「ぽぽ、ぽぽぽ」


「うん、確かにシトの方が大きいから囮には向いているかもしれないけど、消防車を操作しなきゃでしょ?」


「ぽぽ……」


 納得したけど、納得できない。そんな複雑な気持ちがシトの顔に出ていた。


「大丈夫、無茶はしないから。それにちょうど、消防車の中にはしご車があったから。梯子に乗ればすぐ太陽に届くよ」


「ぽ」


「シト」


「ぽぽ」


「消防車の放水が、一箇所に集まるように操作してね」


「ぽぽぽ」


。だから、一点集中放水が、効くと思うんだ」


「ぽぽ」


「それにね」


「ぽ?」


「二つ目の太陽に近づく事は、あの大元と思われる黒浜茄子に近づく事でもある。だから、あるかわからないけど、弱点を見つけられるかもしれない」


「ぽぽぽ」


「うん、一石二鳥になるといいね」



 — — — —



 あとがき。


 みょうじんしるべ、5さいです。しょうぼうしゃをべんきょうしています(笑)


 次回、弱点は掴めるか!? 恐ろしい太陽! です。


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