第10花 二つの太陽

「……ん」


 翌朝、さきは目を覚ました。はずだが、まだ夢の中かのように、見えた景色は暗い。それもそのはずだ。シトが。


「ん? わっ! シト!?」


「ぽぽ」


 覆い被さっていたからだ。


「え、えっと。守っていてくれたんだよね?」


「ぽぽぽ」


「あ、ありがとう。おかげでゆっくり眠れたよ」


「ぽぽ」


 シトが嬉しそうに目を細め、咲から体を退かすと。


「うわっ、眩しっ」


 太陽の強い陽射しが彼女を照らした。


「…………」


 咲は目を見開き、空を見あげながら立ち上がった。


「……シト、おかしいよ」


「ぽ?」


「太陽がある……」


 咲が遥か上にある太陽を指すと、シトも見上げ。


「ぽ……」


 驚いたように目を見開いた。


「しかも、なんか、くろ浜茄子ハマナス。大きくなっていない?」


 咲は町の中央にある、の黒浜茄子を指した。

 太陽から、主に二つ目の太陽から。光を浴びて今でも少しずつ成長している。


「……シト、作戦変更」


「ぽぽ?」


「昔、に教わったんだ。植物は光合成をしているって」


「ぽぽぽ?」


「光合成はね、光を利用して無機炭素から有機化合物を合成する反応のこと」


「ぽぽー?」


 シトは大きく首を傾げた。


「わかりやすく言うとね。光から、太陽の光から、生体に必要な物を作り出すちゃうの」


「ぽぽぽ」


 シトは二つ目の太陽をきれいな指で指した。


「そう。は、明らかに、黒浜茄子を照らしている」


「ぽぽ……」


「どんどん追い込んで、生きづらくしたいみたいだね」


「ぽぽ?」


 シトは口角を指で上げた。


「あ、私、笑ってた?」


「ぽ」


 シトはこくりと頷いた。


「なんかさ、ここまで来ると可笑しくなるんだよね。あの花は何がしたいかわからないし、落としたかもわからないけどさ。私とシトが生きているのが、気に食わないんだなって」


「ぽぽ」


「だからさ、こうなったらさ」


 咲はシトを見据えた。


「何がなんでも生きてやろう。生きよう」


「ぽ」


 咲の言葉を聞き、シトはしっかりと深く頷いた。


「普通の太陽なら無理だろうけど、は普通じゃない。だから、消すよ、太陽を」


「ぽぽ」

 


 — — — —



 あとがき。


 次回、VSの太陽。そして、新章です。


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