第5花 白い帽子の“シト”

「休めそうな場所なんてないね」


「ぽ」


 男に肩車されたさきは、親戚の家から離れ彷徨っていた。


「あれを、消さないとダメなのかな?」


「ぽ」


 咲は、町の中央に落ち、美しく咲いたくろ浜茄子ハマナスを見た。


「でも、近づけば喰われ、離れていても花にされる。せめて、周りの花を少しでも減らせれば……」


 咲は辺りの黒浜茄子を見渡し。


「ねぇ、あれを攻撃してみて」


 一つの黒浜茄子を指した。


「ぽ」


 男の髪は伸びていき、鞭のようにしなりながら、黒浜茄子を切り裂いた。

 だが、裂かれた部分から、花びらや雌しべなどが再生してしまう。


「ダメか、やっぱり。……そうだ。きっとは花じゃない。


 咲は、考えた。花を切り裂いても、再生するのは当たり前だと。花だから、潰さないといけないのは。


「根っこだ」


 地面に深く根付いているもの。花の根を消さない限り、再生し続ける。


「でも、無闇に近づけない。弱らせてからじゃないと。……弱らせる、除草剤とか効くかもしれない」


「ぽ?」


「うん、ホームセンター探しに行こう。といっても、みんな壊されて、どれだかわからないね」


「ぽ」


 男は長くきれいで骨張った指で、咲の右肩を突いた。


「なぁに?」


「ぽ」


 そして、一軒の崩壊している建物を指した。


「あれ? あそこがホームセンター?」


「ぽ」


「よく知ってるね」


「ぽぽ」


 男は嬉しそうな声を出した。


「ここに住まう、妖怪さん? なの?」


「ぽー?」


 男は首を傾げた。


「ま、いいや。じゃあ、あそこに行こうか」


「ぽ」


 二人は数キロ離れた、ホームセンター場所へ歩き出した。




「そういえば、あなた名前は?」


「ぽ?」


「わかんないか。……じゃあ、白いハットが素敵だから、シトでいい?」


「ぽぽぽ」


 シトと名付けられた男は、何度も嬉しそうに頷いた。


「改めてよろしくね、シト」


「ぽぽ」



 — — — —



 あとがき。


 どの作品でも、私のネーミングセンスは皆無(泣)


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