第6花 さきとしと

「シトは「ぽ」しか喋れないの?」


「ぽ……」


 シトは困ったように眉を下げた。


「わかった、ごめん。後で言葉を教えてあげるから」


「ぽぽぽ」


 シトは歩きながら嬉しそうに体を揺らした。


「でも、私の名前くらいは言えてほしいな。いい? 私は、さ・き」


 さきは口の形がわかるように、大きくゆっくり話した。


「ぽぽ」


「うん、まぁ、わかっていたけどさ。じゃあ、せめて、自分の名前が言えるようになろうか。あなたは、し・と」


「ぽぽ」


「ふふっ、一緒じゃん」


 咲が可笑しそうにくすくすと笑うと。


「ぽぽぽ」


 シトも嬉しそうな声を出した。


「ま、時間なら、くろ浜茄子ハマナスべられたり、花にされなきゃいっぱいあるから。とりあえず、人らしい人は私たちだけみたいだし。ゆっくり行こう、でも、あの花は早く消そう」


「ぽ」


「人らしい人って言ったけど、シトは人じゃなかったね。妖怪さん? だっけ?」


「ぽぽぽ?」


 シトは首を傾げた。


「……自分が誰だかわかんないの?」


「ぽ……」


 シトは寂しそうに小さく頷いた。


「よく親戚の家の近くにいて、私と目が合っていたけど?」


「ぽぽ?」


 シトはまた首を傾げた。


「……まさか、自分が何であそこにいたのかもわかんないの?」


「ぽ……」


 しょんぼりと、シトは八尺ある体を縮こませた。


「責めてないってば、だから、落ち込まないでよ」


「ぽ」


 咲の言葉を理解したのか、シトは背筋を伸ばした。


「うん、じゃあこうしようか。“シト”についてはゆっくり探して。黒浜茄子は急いで消す」


「ぽ」


 シトは力強く頷いた。


「二人で探していこうね。こんな世界でも生きる方法を」


「ぽぽ」




 — — — —



 あとがき。


 シト、しと……。どうしても“使徒”を思い出す。なんて言ったら、年齢がバレそうですね(笑)


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