第3花 生きたい

「……え?」


 さきは驚いた。何故なら男は身長が二メートル近くあるからだ。

 どう考えても、


 だが、何故か怖くなかった。


 男よりも大きなくろ浜茄子ハマナスが、人を喰らっていて、偶然かはわからないが、助けられたからだ。


 つるを切断された黒浜茄子は、突如、花びらを散らせた。

 その花びらに触れた建物や、野良猫などは、になってしまった。


 黒浜茄子に。


 咲と男の周りは、黒浜茄子で満ちてしまった。そして、多方向から蔓が伸びてくる。だが、どれも。


「ぽ」


 男の伸ばされた髪が切断し、咲には届かない。

 咲を救った“何か”は、男の髪だったのだ。

 意思があるのかないのか、黒浜茄子は、怒ったように花びらを散らし、花を増やし、腹が減っているかのように、涎のような水分を垂らした。


 こんな、化け物花を見れば、自分の後ろに立つ背の高い男など、咲は怖くなかった。それに、咲が見上げると。


「ぽ?」


 嬉しそうに、目を細めた。


「…………」


 咲は考えた。


 絶望でしかない日々。それが、最後を迎えたかと思えば、また、絶望。

 生きている方が辛い。だが、これまで、楽しいと思える日を過ごせず、事務的に食事も就眠しゅうみんも行なってきた。




 こんな世界になっても、生きたい。



 人間らしく。



「……ねぇ」


「ぽ?」


「……生きてくれる? 私と」


「ぽ」


 男が嬉しそうに頷くと。


「じゃあ、逃げるよ」


 咲は黒浜茄子に背を向けて走り出した。


 身長がある男と、共に。



 — — — —



 あとがき。


 正解は、“八尺様”でしたー。


 あのねー、私ねー、八尺様の男版漫画を読んだのねー。かっこよかったのねー、書いてみたいと思ったのねー(貴◯花さんを真似する芸人さん風)


 フォローとかねー、ポチして応援してくれるとねー、励みになるのねー(その二(笑))

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