第2花 落とされたもの(※残酷描写あり)

 “それ”は遠目でもわかるほど、大きな物だった。


 巨大な何かが、町の中央に落下した。

 隕石が落とされたかのような衝撃音が響き、大きなこうができた。


さき、様子を見てきなさい」


 和室の奥で座っていた老女が、少女に強い口調で言った。


「…………」


 名前を呼ばれたボブショートな黒髪の少女、深夜ふかやさきは、立ち上がると乱れた服を直し、親戚の家を出た。




 咲が町の中央に辿り着くのは早かった。

 巨大な何かが落とされた衝撃で、半径五十キロ内の建物が壊されたからだ。

 破壊された建物の破片を踏みながら進むと。


「……種?」


 町の中央にあったのは、大きな種だった。

 白に近い薄黄茶色の種。


「きれい……」


 滑らかな皮の種。それは人々に興味を抱かせた。


「何だ何だ!?」


「種!?」


 衝撃から免れた人々が集まってきた。すると。


「え……?」


 種は急に芽吹き成長し、空まで届きそうなほど伸びると。


「うわぁ……」


 大きな花を咲かせた。黒い浜茄子ハマナスを。


「不気味だけど、きれいねー」


「でも、こいつのせいで町はぶっ壊れたんだ。こんな花、早く切あ」


 野次馬の男は最後まで言葉を紡げながった。黒浜茄子から伸びてきたつるが、男の顔面を貫いたのだ。


「ひっ……」


「キャー!」


 野次馬たちはおののき。


「——……」


 咲は恐怖で声が出なかった。


 顔を貫かれた男は、そのまま黒浜茄子に飲み込まれ。バキッゴキッぐちゃぐちゃと、悍ましい音と共に、喰われた。


「ギィヤー!」


 野次馬たちは一斉に逃げ出したが。


「ギャッ! ごふっ!」


 黒浜茄子から伸びてきた蔓で、両足を切断され、逃げる術を失い、すぐに顔や腹を貫かれた。

 そして、黒浜茄子の食糧となった。





 咲以外の野次馬たちは全て捕食された。

 そして、ついに、咲にも鮮やかな程の緑色をした蔓が伸びてきた。

 咲は目を開いたまま、死を覚悟し、蔓を見つめていた。

 が、咲の顔に届く瞬間に、後ろから伸びてきた黒い“何か”で蔓は切断された。


 わけがわからず、咲が固まっていると、彼女を遥か上から覗く何か。

 咲が恐る恐る見上げると。


「ぽ?」


 白いハットを被り、顔が整った背の高い男が、咲を見下ろしていた。



 — — — —



 あとがき。


 ホラー好きで、怪異好きの方は、もうこの時点で何かわかったことでしょう。


 そう、あれの男版ですよー。

 

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