FAKE MADE JAPAN

エリー.ファー

FAKE MADE JAPAN

 ビルの窓硝子に映っているのは、私によく似た誰かの横顔だった。

 他人の空似というほかない。

 何か、意思を持っているようには思えなかった。

 不思議な気分である。

 人間という生き物の君の悪さ。生物的な嫌悪感。すべてが凝縮された視界に詰め込まれている。

 嘔吐しかける。

 隣の客が私の方を見た。

 私は会釈をする。

 隣の客も会釈をする。

 そして、喫茶店を後にする。

 歩いている途中で思ったのは、窓硝子に映っていた私に似ていて誰かの正体は、本当は私だったのではないか、ということだ。

 私は、私を私として認識するのが下手糞になってしまった可能性がある。

 もしかしたら、築き上げてきた感覚に間違いがあったのかもしれない。いずれ、正解を手にすることはあるだろうが、今ではないし、当分先のように思えた。

 もう一度、あの喫茶店に入ってみよう。

 いや、やめた方がいいかもしれない。今度は嘔吐するかもしれない。



 

 緊張を伴う行為にはいつだって、問題がある。

 回答と解答の違いには、人間の可能性が詰まっている。

 哀れな日々に別れを告げるための時間が必要なのではないか。

 青く輝く地球の上で白黒つけるための真っ赤な戦いを始めよう。

 決戦はいつだっていい。



 東京という街には優れた社会人が多い。

 きっと、今にも溢れ出てくるだろう。

 世界が変わる音がする。

 君にも聞こえるはずだろう。




 文字と時間で作り上げた世界があり、そこには私の知らない毎日が用意されている。

 十中八九というだけでは見つからない、真実がそこかしこに溢れている。

 ここに、勘違いを一つ。

 間違いを二つ。

 自惚れを三つ置いて行け。

 気が付けば、人は神に近づくだろう。

 神と共に生きていくために、見えてくる世界があるだろう。

 壊してこそ前に進めるが、壊す前から進もうとする者たちのための鎮魂歌。

 変わってはいけない。

 修正もいけない。

 成長もいけない。

 ただ、君が君でいることだけを願い。

 ただ、君が君のために生きることを願い。

 ただ、君を君として世間が知ることを願い。




 すべては完成した。

 始まりは過ぎた。もう既に始まっている。




 間違いがないように、丁寧に包んだお菓子を砕いてミキサーの中にいれる。そこへミネラルウォーターと氷を入れて、スイッチを入れる。僅かばかりのスパイスの調合は秘密である。泡だったところを完成として、太陽光を二リットル分。金曜日の夜の月の光を十三リットル。

 人間ができる。

 モラルに形はなく、価値はない。

 すべてが世界を覆いつくしていくだろう。

 答えはすべて出ている、準備が整ったわけではないが、始まっている。

 後悔のない人生を、自分を知ろうとする時間を大切に。

 どうか、御無事で。




「きっと、真実があったということなのだと思います」

「本当でしょうか」

「真実はどんな味をしているというのでしょうか」

「そのファイルに入っているのは、何ですか」

「アドレスを教えられません」

「限界が近いのです」

「白く塗りつぶして下さい。そして、真っ暗な部屋で殺して下さい」

「数字が必要です」

「どうにもなりません」

「エラーです」

「死にます。まずいです。死んでしまいます」

「あ、あの時の失敗が」

「駄目だ。分かっていたのに、恐怖していたのに」

「死ぬ」

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